<文化環境研究所 News> 第15号
2001.3.30発行

3月15日からの3日間、
江戸東京博物館(東京・両国)において
「博物館における評価と改善 スキルアップ講座」が開催されました。
「スキルアップ講座」は、
博物館は評価や検証を取り組むことによって
何が分かり、どう結果を生かすことができるのか、
そして、博物館はどのように変わりえるのかについて、
参加者が体系立てて考える力の開発を目的とした
ワークショップとセミナーです。
今号の話題では、
この「スキルアップ講座」に焦点をあてます。

−お知らせ−


科博セミナー どうかわる・どうかえる
最新の科学動向と科学博物館の使命/国立科学博物館新宿分館

4月1日から独立行政法人化される国立科学博物館で、 下記のようなセミナーが4月8日(日)に開催されます。 会場は国立科学博物館新宿分館(新宿区百人町)ですので、 お間違えないようご注意下さい。 こちらで分館への行き方がご覧になれます。 http://www.kahaku.go.jp/secondary_organ/shinjuku/index.html

♪.国立科学博物館さんからの情報です。
科学博物館の社会的使命は,
後世に残すべき自然や科学・技術史の知的財産を
コレクションとして保管し,
それらを将来にわたって有効に活用することです.
展示,教育,普及,研究と
博物館に求められる役割は多岐にわたりますが,
その根幹は研究とコレクションの継承・充実であり,
蓄積の歴史的結果です.
はるか昔から現在まで,さらに将来とも,
このことに疑問の余地はありません.
質の高いコレクションの効果的な収集や活用は,
最先端の研究活動が前提にあってはじめて可能で,
その成果がすぐれた展示に反映されます.
研究活動は,その時々の科学の到達点によって
刻々と変わっていくものである以上,
博物館活動もその時々の科学の動向と無縁ではありえません.
本セミナーでは,国立科学博物館が
4月1日をもって独立行政法人に変わるのを契機に,
科学の第一線で活躍され,深い学識のある諸先生に,
最新の研究動向や博物館の今後の方向を語っていただき,
科学博物館の望ましい将来を考えてみます.
知的魅力にあふれ,創造的な科学博物館にしていくために,
活発な討論が行われることを期待しております.

開催日時:4月8日(日) 午後1時00分〜午後5時30分
開催場所:国立科学博物館分館,研修研究館4階講堂
(東京都新宿区百人町3ー23ー1)
参加費:無料

● プログラム予定
13:00 開会
13:10 ヒトゲノム時代の博物館
      日高敏隆/滋賀県立大学学長
13:55 生物種を絶滅から護る博物館の役割
     −南西諸島地域を例にして−
      堀田満/鹿児島大学理学部長 
14:55 大型深海掘削船による未踏の世界への挑戦
      平朝彦 /東京大学海洋研究所教授
15:40 科学博物館を楽しむ
      石川英輔/作家
16:40 パネルディスカッション 
      どうかわる・どうかえる,科学博物館
コーディネーター 斉藤靖二(国立科学博物館地学研究部長)

申込みは、氏名・住所・電話番号を記入の上、
E-mail:seminar@kahaku.go.jpまでお送り下さい。
4月2日締切、先着100名まで参加できます。
問合せ先:国立科学博物館分館セミナー係
電話 03-3364-2311
[国立科学博物館URL] http://www.kahaku.go.jp/



科学博物館のもうひとつの顔
科博ラボ(研究室・資料庫)公開/国立科学博物館新宿分館

♪.もうひとつ、国立科学博物館さんからの情報です。
国立科学博物館研究部門の標本収蔵庫と 研究室をのぞいてみませんか?
上野とはまた違った雰囲気の、新宿分館へ,ぜひお越し下さい。
通常は専門家しか見ることのできない、多くの標本を公開します。
当館所属の第一線の研究者たちが、それぞれの専門分野や、 現在行っている研究活動について、わかりやすく解説します。
自然を理解するためには、自然物の標本に基づく研究が欠かせません。
また、近代科学・技術の発展の歴史も、 実物資料に基づいて探究する必要があります。
当館では、世界の他の一流博物館と同様に、 ありとあらゆる生物、化石、岩石・鉱物、遺跡出土古人骨、 科学・技術資料などの標本を収集・管理し、 自然科学および科学・技術史の研究に役立てています。
これは、展示・一般教育普及活動と並ぶ、 博物館の最重要の社会的使命です。
展示場での学習だけでは、 一方的に話を聞いて理解するだけの受け身姿勢になりがちです。
しかし実際の研究の現場では、自分で新しい問題を発見し、 そして新たな事実を探究することが、日常的に行われています。
こうした真の学術研究の雰囲気に触れてみませんか?

開催日時:4月8日(日)午前10:00 - 12:00
開催場所:国立科学博物館新宿分館
入場は無料で、子供から大人まで,誰でも歓迎とのことです。
問い合わせ先:国立科学博物館分館
電話:03-3364-2311



天文指導員」募集のお知らせ/札幌市青少年科学館

札幌市青少年科学館で「天文指導員」が募集されています。
最低2年間継続できる市内及び近郊在住の大学生・短大生が対象。
定員は26名、面接により選考されます。

「天文指導員」の条件としては、大きく2つ。
1. 年間20回程度実施される研修への出席
2. 星空観望会などの実習をかねたボランティア活動
 (こちらも年間20回程度開催予定) に参加することです。

希望する方は4月22日まで直接科学館に来館の上、 申込みください。
(申込み前に、電話で詳細を確認してください)

申込み先
札幌市青少年科学館
電話:011-892-5001
住所:北海道札幌市厚別区厚別中央1条5丁目2-20

−今号の話題−


博物館における評価と改善 スキルアップ講座/江戸東京博物館

実施されたワークショップとセミナーの様子を取り上げます。
ワークショップの記述については、 青木俊也さん(松戸市立博物館)に協力いただきました。

1.ワークショップ
まずワークショップの様子を、 参加された青木俊也さんにお聞きしてみました。
青木さんは松戸市立博物館の学芸員で、 民俗学を担当されており、 昨秋に開催された企画展「戦後松戸の生活革新」では、 来館者調査や展示評価を実施しながら、 展示を開発されました。
青木さんによるとワークショップの参加者も、 セミナー同様、学芸員が多かったようです。
3月15日から17日の3日間に 江戸東京博物館で開催された 「博物館における評価と改善スキルアップ講座」 のなかのワークショップ 「参加型展示を開発しよう 評価と改善を基盤にして」に参加した。
このワークショップは、15日と16、17日の前後2回に分けて、 1回目は、江戸東京博の学芸員の人たちに外部の参加者が加わった。
まず、講師の三木美裕氏より 「展示開発と評価・改善」の要点を教えていただき、 8チームに振り分けられた。

下肥桶の体験コーナーのチームに入り、 メンバーは大田区立郷土博物館と 江戸東京博の学芸員の2人と私の3人で、 下肥桶の体験コーナーの展示ゾーン「江戸と結ぶ村と島」観覧し、 インストラクターの指示に従って観覧者調査を試みた。
調査方法はゾーン内の観覧者が、 下肥桶に立ち止まって体験する割合の観察、 ゾーン全体で観覧者の追跡、 下肥桶での観覧者の会話の聞き取り、 体験した人に展示テーマのインタビューの3方法で、 それぞれを時間を分けておこなった。
短時間だったが、コンスタントに観覧者が展示室に現れる 江戸東京博だからこそ出来た貴重な調査体験だった。

調査結果に基づいて、展示の改善を試みた。
まず、下肥桶を理解している人と、 下肥そのものを理解していない人に はっきりと分かれることだった。
中学生には下肥は全く未知のもので、 下肥桶の中に復元された下肥のレプリカをみても、 ウンコであるのがわからない状況だった。
あんこという人もいた。
とりあえず、中身がウンコを肥料化した下肥であるのを 説明しなければならなかった。

次に体験コーナーのパネルの解説文で、 簡単に記せば 「江戸から供給された下肥は近郊農村の野菜づくりの肥料となった。
一方で野菜は江戸へと供給され、下肥のお礼にもなった」 という展示ゾーンと対応した内容であった。
チームでは解説文から読みとれるメッセージと 下肥桶を担ぐ体験して得るメッセージとは、 必ずしも対応していない問題であった。
下肥桶を理解して担いだ人たちでも、 江戸と村を結ぶ下肥の役割について理解する人は、 ほとんどいなかった。
つまり、下肥桶の体験コーナーには、 下肥システムのメッセージは 荷が重すぎるというのがチームで考えた答えだった。
しかし、メッセージの変更はできないと思われたので、 その改善として「都市のウンコは、ムラの野菜と交換できた?」 という簡略な解説文をつくり、 下肥桶の中身が素はウンコであることを強調して、 桶の中身がわからない人たちに気付いてもらえるように考えた。

2.セミナー
16日午後に開かれたセミナー(16日午後)では、 まず、佐々木秀彦さん(江戸東京博物館)より 「博物館における評価と改善」の全体像を把握するため、

(1)正しい評価法とは何か?
(2)博物館活動を数値で評価できるのか?
(3)評価して博物館に役にたつのか?
以上、3つの疑問を解きほぐしながら、 さまざまな博物館評価の整理と 博物館評価のあり方、 今後の課題のまとめを行ないました。

佐々木さんの発表を受けて、 行政評価(上山信一さん/ジョージタウン大学政策大学院) 来館者調査(平田穣さん/大阪港振興株式会社) 展示評価と検証(三木美裕さん/全米日系人博物館) の切り口から、 評価と改善についての具体的な事例が発表されました。

●『博物館は初期投資が大きく、利益を産みにくい』 これは上山さんのセミナー中での発言を拾いあげたものです。

企業・行政を問わず、 評価・改善の手法を立案しているプロの立場から、 博物館の改善について 4つの視点で考えてみたらどうかと提案されました。

1.自由に経営してみる。
→ 規則や制約など様々な障害があることを改めて認識。
2.稼げるのなら、稼ぐ。
→ 少しでもやると、組織的な変化が生じる。
3.経済的に自立しようと思うな。
→ 儲かる仕組みで施設を設立していないので難しい。
4.パーソナルな色彩をもっと出す。
→ 最もインパクトがあるのは「人」、もっと人を前面に出す。

先送りにして困っていること、 直した方が良いことなどを改善するには、 まず職員の間で、本音で議論する必要がある。
そのための材料として来館者の声を集めることが、 博物館改善の第一歩につながっていく。

また、上山さんは、 『情報公開法が、行政改革はもちろん  博物館にとっても変革をもたらす大きな要素になる』 と推測しています。

年報などの発行物で、自分たちの活動について 情報を開示している博物館が多いですが、 公開のスピードや、その範囲が ますます早くなり、拡大していくものと思われます。

さらけ出すことに、耐え得るのはもちろん、 自分たちの施設には「このような使命を持っている」と 社会に向けて発信し、その理解が得られないと、 いくら博物館が、初期投資が大きく、 利益を産みにくいと説明しても、 淘汰されてしまう恐れを感じました。

注1:会場で配布された資料集には、 東京都が2000年に実施した、監理団体総点検結果が抜粋されており、 都が運営に関与している文化施設の評価結果を転載している。 そこでは、江戸博の評価は5段階のD、 高尾自然科学博物館はEの評価を受けている。

注2:上山氏が関わっている行政評価に関する図書は、 東京法令出版さん(:03-5803-3304)から 下の二冊が発行されています。
『実践・行政評価 -事例、解説、そしてQ&A-』2,300円(税別) 『行政評価における地域経営戦略』3,000円(税別)

●セミナーには、どんな人々が参加していたか

当日会場で、 文化環境研究所の発行物を配布させていただきました。 その際に記帳いただいたリストや、名刺から判断すると、 博物館の運営に携わる人々が、 参加の大半を占めていたようです。

次いで民間企業、研究者の順で、 少ないながらも(残念ですが)新聞社など、 マスコミの方々も出席されていました。 また、文部科学省や国土交通省など複数の中央省庁の 政策評価に関わる官僚の方も来場していました。 セミナーに出席されて、 どのような感想をもたれたのでしょうか。


皆様からの情報をお待ちいたしております。
info@bunkanken.comまでお送り下さい。