<文化環境研究所 News> 第21号
2001.6.29発行

今号の話題では、オーストラリアのシドニー水族館(後編)について、紹介いたします。

−お知らせ−


新刊図書の紹介
  『目的地は国立公園』
  『エバーグレーズよ永遠に』
  『自然環境法講義』



『目的地は国立公園』
   加藤峰夫 著
   定価2,500円(税別
   発行:信山社 Tel.019-663-2627
サブタイトルは、
「アメリカとカナダの国立公園を訪ね歩いたひと夏の旅から」です。
1996年3月-9月の半年間、文部省(当時)の在外研究としてアメリカとカナダの国立公園の管理状況を調査したものを一冊にまとめたものです。
著者がそこで強い印象を受けて感じた点(特に管理制度の面を中心に)や日本の国立公園でも検討してみる必要があるのではないかという視点からまとめられています。
巻末には、あまり知られていないカナダにおける国立公園の制度の概要が資料として付記しています。

目次(抜粋)
●規則ばかりの国立公園 ●規律正しい?クライミング・バムたち
●よく行き届いた、障害のある人への配慮
●スモッグと水不足に泣く?グランドキャニオン ●「複線化」するトレイル
●自動車を減らせ! ●バックパッキングは人数制限 ●日帰り客も多すぎる!
●Human Waste対策あれこれ ●山の環境保全費用は登山者から徴収せよ!
●野生生物に対するマナー ●「生物保護」ではなく「生態系保全」
●消すべきか、放置すべきか、それとも事前に燃やすべきか?
●空間的に贅沢で快適なキャンプ場 ●人々は国立公園で何をする?
●「トレイル」とは何か? ●営業山小屋の功罪
●レンジャーは本当にアウトドアのスペシャリストか?
●「人馬一体」は難しい ●節水・省エネ・リサイクル
●国立公園と先住民の権利 ●焚き火あれこれ
●国際平和公園に見る、アメリカとカナダの国立公園のコントラスト
●予算削減の折りから、諸事有料・値上げとなり申し候
●カナディアン・ロッキーがディズニーランドのフランチャイズになる?
●「軽井沢化」するバンフの町
●あれは何だ?鳥か?飛行機か?いや…ク、ク、クマだ!!
●国立公園の危機 ●NGOとの積極的な協力 ●国立公園は元祖のテーマパーク
●めざすは「人と自然のユートピア」か? ●ひるがえって日本の国立公園は

[関連URL]http://www.econ.ynu.ac.jp/member/kato/kato_j.htm
(加藤峰夫氏の勤務先である横浜国立大学経済学部のホームページ上で掲載されている加藤氏のプロフィールがこちらでご覧になれます)

『エバーグレーズよ永遠に』
   南フロリダ水管理局 桜井善雄 訳・編
   定価2,500円(税別)
   発行:信山社サイテック Tel.03-3818-1084
本書は、南フロリダ水管理局(米国フロリダ州)が推進しているエバーグレーズ湿地流域の自然環境の保護と復元を軸とする広域の水環境・水循環回復事業に関して、関係地域の住民に対して水管理局の事業理念や方策を、解説・周知させるために作成された資料を忠実に翻訳し、南フロリダで推進している水環境保全事業の概要を紹介しています。

目次(抜粋)
1.水環境管理への挑戦 東海岸低地における開発と排水事業
2.南フロリダ水管理局の研究
3.キシミー川の研究
4.オキチョビー湖の研究
5.エバーグレーズ栄養塩除去プロジェクト 2年目の成果
6.エバーグレーズの研究
7.フロリダ湾の研究
8.水環境管理事業の「見直し」とはどういうことか
9.南フロリダの水環境管理を推進している行政組織とその手続き
10.南フロリダにおける水環境管理施策の特徴

[南フロリダ水管理局 URL] http://www.sfwmd.gov/

『自然環境法講義』
   畠山武道 著
   定価2,800円(税別)
   北海道大学図書刊行会 Tel.011-747-2308
「自然公園法・鳥獣保護法等の自然保護法の他に、
 河川法・砂利採取法など公共事業法も取り上げその仕組みを検討。
 環境権・公共信託・生態系保護・住民参加を軸に、
 個々の法制度の問題や今後の方向を提示する。」(帯書より転載)

厳めしい『自然環境法講義』という書名に反して、
自然環境に関わる法制度をやさしく解説しています。
書中には31のテーマでコラムが設けられており、
国内外の最近の話題や歴史上のトピックスを紹介しています。
また、巻末の参考文献のリストはこのテーマに興味のある方に
お役に立つはずです。

目次(抜粋)
第1章 自然保護法の発達
1.日本の自然保護運動 2.自然保護法の発達(日本)
3.諸外国における自然保護法の発達
第2章 自然保護法の体系
1.公害法の種類と仕組み 2.自然保護法の体系と特徴
3.公害防止条例と自然保護条例 4.環境基本法・環境基本条例
第3章 自然保護法の基本理念
1.自然保護と環境権 2.公共信託 3.生物多様性の保護 4.住民参加
第4章 森林生態系の保護
1.日本の森林生態系 2.森林生態系保護法制の歩み 3.森林法
4.国有林制度と生態系保護 5.林道建設と自然破壊
第5章 河川生態系の保護
1.日本の川は今 2.河川法の仕組み 3.ダム・堰 4.土砂・砂利採取
第6章 海岸・湖沼・湿地生態系の保護
1.日本の海岸はどうなっているか 2.海岸環境保全に関する仕組み
3.公有水面埋立法 4.湖沼保全と水質管理 5.湿地保護
第7章 自然景観の保護
1.生態系としての自然景観 2.自然公園法の沿革 3.自然公園法の仕組み
4.自然公園のかかえる問題 5.国立公園の管理と住民参加
6.自然環境保全法の仕組み
第8章 野生生物と生物多様性の保護
1.野生生物がおかれている状況 2.鳥獣保護狩猟法の仕組み
3.種の保存法・種の保護条例 4.天然記念物制度
第9章 自然保護のための法的手段
1.自然保護のための法的手段 2.環境基本計画 3.環境アセスメント
4.自然保護訴訟

[北海道大学図書刊行会URL] http://www.hup.gr.jp/




『文環研レポート16号』が発行されました
今号の内容をご紹介いたします。
◎環境教育教材の開発 −印刷物を中心として− 津田雅人
  環境教育のための教材は、どのように計画され、作成すると、
  期待された効果を得られるのでしょうか。
  本稿では環境教育教材の中から印刷物に焦点をあて、
  具体的なサンプルを見ながら
  計画の基礎から、どうしたら魅力的に仕上がるかを考えます。

◎様々な面でアクセスが自由な水族館 ‐シドニー水族館‐ 吉岡伸
  年間100万人以上をコンスタントに集客しているシドニー水族館。
  その運営の視点は、娯楽を目的とした「観光」に重きを置れています。
  多くの人々に足を運んでもらうためのハードの整備はもちろん、
  様々な方法でアクセスしやすい環境を日夜整えています。
  レポートでは、この具体例を紹介し、考察を加えます。

この『文環研レポート16号』をお読みになりたい方は、
〒108-0023 港区芝浦4-6-4
文化環境研究所 「文環研レポート16号発送係」まで、
名前と住所を記入し、必ず140円切手を同封の上、お申込みください

−今号の話題−


様々な面からアクセスが自由な「シドニー水族館」(後編)

後編では、「身体的にハンディをもった人たちへの配慮」
「学校団体に向けた対応」といった視点から、
シドニー水族館の取り組み例を紹介したいと思います。


◇身体的ハンディをもった人たちも楽しめる展示
1日かけて取材している間、
肢体に不自由があり、車椅子を利用している人のグループと、
視覚に障害をもった人のグループに出会いました。
施設的には、ほぼ階段を用いず、スロープによる移動が可能なこと、
通路幅をでき得る限り広くとっていることなどが
バリアフリー対策としてあげられますが、
他にも子供が見やすい位置に覗き窓や展示物など
いくつも設置されていることから、
それを利用して個人個人のペースで楽しんでいる様子がうかがえました。
車椅子の人を見れば優先的に見やすい場所に出してあげたり、
小さな水生動物が触れるタッチプールなどでは、
健常者と分け隔てなく対応するなど、
来館者と運営サイドの成熟度も垣間見られました。
個人的に興味を持ったのは日本からの視覚障害を持った人たちが、
グループで見学に来ていたことです。
最初は、グループでまとまって行動していましたが、
自分の興味に合わせて次第にばらけていきました。
水族館には、けがを負ったり、すみかを失ったため、
野生にもどることができないアザラシやアシカを保護している
「Seal Sanctuary」というコーナーがあります。
そこに設置された20人も入れば満杯になるような観察スペースは、
床・壁がガラス張りで水中での動物の様子が間近に見られます。
そこでアザラシを見ている視覚障害をもった来館者に
シドニー水族館の印象を尋ねところ
『いいねー、良く見えなくても、(水族館は)中々楽しめる。
特にここ(の観察スペース)は海の中にもぐって
アザラシと遊んでいるようだ』と興奮気味に語られました。
身体的にハンディがあっても、色々楽しめる要素が多いので、
このような障害をもった人々にも人気があります。
来場を促すため、付き添いで訪れる人には入館料が免除されたり、
グループに対しても特別な割引があるため来場があとを絶ちません。

◇無償で学校団体に提供される教材
シドニー水族館では学校遠足の対象としても人気があり、
2000年度は入場者総数の約4%にあたる50,000人に利用されました。
人を介したインタープリテーションや
学校向けガイドツアーの類は実施していませんが、
ニューサウスウェールズ州の学校に対して無償で提供している
『教育キット』の存在が学校利用を促進しています。
教育キットは「K-2」「YEARS 3-6」「YEARS 7-12」
「ESL」の4種類が用意されています。
「K-2」は就学前後の低学年生、
「YEARS 3-6」は学齢3-6年生(年齢で言うと8〜11歳)、
「YEARS 7- 12」は学齢7-12年生(年齢で言うと12〜17歳)、
「ESL」は英語を母国語としない、
第二言語として英語を学んでいる学生を対象にしており、
テーマも多岐にわたっています。
元々この「教育キット」は、印刷物で提供されていたのですが、
印刷コスト削減のため、2001年1月から
ホームページでダウンロードできるシステムに更新しました。
水族館の学習的な利用に寄与する情報や教材を無料で
ホームページからダウンロードできることから、
オーストラリア国内における
"Best educational resources on the Web"の1つとして選ばれています。
※『教育キット』の詳細はこちら≪↓≫を参照ください。
http://www.sydneyaquarium.com.au/html/school.html
無償で提供される教材以外にも、
教員が学校利用のため水族館を事前に見学する場合
無料で入場ができますし、
学校団体には特別なレートでの団体割引も設けています。

◇集客へのこだわり
ここシドニー水族館では、特定の来場者を設定せず
あらゆる層から支持される施設を目指しています。
その理由としては、
多くの投資家に利益を還元する使命も持っているため、
一人でも多く来場してもらう必要があるからです。
だからこそ、集客へのこだわりは並々ならぬものが感じられます。
年間コンスタントに100万人以上集客するため
立案したマーケティングプランを元に、1年365日無休で、
一日の半分以上に及ぶ13時間も営業しているのです。
シドニー水族館における毎年100万人以上の集客は、
これだけの要因をつくりだし、
日々努力をしているからこそ達成できるようです。

[シドニー水族館公式URL] http://www.sydneyaquarium.com.au/


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