<文化環境研究所 News> 第27号
2001.10.15発行

今号の話題では、
オーストラリア南東部にあるフィリップ島で試みられている
「動物を活用した観光」について紹介します。

−お知らせ−


日本エコミュージアム研究会(JECOMS)研究大会
♪.大阪の瀧端さんからの情報です。
今年度新たに研究大会を横浜国立大学にて開催いたします。
奮ってご参加くださいますよう、ご案内申し上げます。

日本エコミュージアム研究会(JECOMS)研究大会
日時:2001年10月28日(日)13時から
場所:横浜国立大学(横浜市保土ヶ谷区常盤台79-5)教育文化ホール
電話:045-339-3037(ホール事務室、当日のみ有効)

プログラム
1.「エコミュージアム憲章2001」をめぐる討論 13:00〜14:20
オーガナイザー:井原満明/地域計画研究所 笹谷康之(立命館大学)
発表者および発表タイトル:
●憲章作成の経緯 大原一興/横浜国立大学
●フランスとの比較の観点から 岩橋恵子/志學館大学
●自然保護の手段としてのエコミュゼ フランスの国立公園での取り組み
 今井信五/しろうま自然の会事務局長
●国際的な文化財保護の取り組みの観点から
 井上敏/東京文化財研究所 日本学術振興会特別研究員
●エコミュージアムにおける学術性の担保について
 −専門職員のあり方の視点から−
 馬場憲一/法政大学

2.エコミュージアム研究の視角 15:00〜16:40
オーガナイザー:福田珠己/大阪府立大学
        菊地直樹/兵庫県立コウノトリの郷公園
発表者および発表タイトル:
●(KJ法)×(エコミュージアム)=(どこでも青山的人生)
 今橋克寿/甲西町役場
●地域遺産に対する朝日町民の保全意識の形成条件に関する調査研究
 石川宏之/横浜国立大学 日本学術振興会特別研究員
●エコミュゼとは何だったのか 
 −特に学芸員の他者性とアダプテーションの問題について−
 梶原宏之/阿蘇たにびと博物館 
●現代社会の中のエコミュージアム−『木を見て森を見ず』?−
 福田珠己/大阪府立大学
 
参加費(資料代として):会員1,000円 非会員2,000円
申し込み:不要

横浜国立大学までの交通
JR横浜駅またはJR新横浜駅から市営地下鉄「三ツ沢上町」駅下車
徒歩20分または、横浜駅から市営バス202系統循環外回り「岡沢町」
下車徒歩5分。タクシーでは、1500円〜1800円程度(JR横浜駅または
JR新横浜駅からタクシー15分程度、渋滞具合による)。
詳しくは、横浜国立大学のホームページをご覧下さい。
[横浜国立大学] http://www.ynu.ac.jp/html/index.html

研究大会についての問合せは下記まで
追手門学院大学人間学部 瀧端真理子
〒567-8502 茨木市西安威2-1-15
TEL 0726-41-9547(直通)
FAX 0726-43-9432(教務課)
E-mail takibata@res.otemon.ac.jp
[日本エコミュージアム研究会] http://www.landscape.ritsumei.ac.jp/jecoms/




新刊図書の紹介
『博物館の政治学』
『週間ユネスコ世界遺産 第49号
 イエローストーン国立公園/ハワイ火山国立公園』
★『博物館の政治学』金子淳 著
  定価1,600円(税別) 発行:青弓社 Tel.03-3265-8548

本書では、
おおむね1928年(昭和三年)から1945年(昭和二十年)にかけての
日本国内(内地)における博物館の政治的な状況を
おもな考察対象としている。
また本書では、「国史館」と「大東亜博物館」という
二つの博物館計画に焦点を当てている。
この二つの博物館は、戦時下国家がその威信をかけて
計画した大規模なものであったが、
いずれも日本の敗戦によって実現しなかった
いわゆる「幻の博物館」である。
しかし、この二つの博物館が残した遺産は、
戦後の博物館建設に多大な影響を与え、
現在の博物館界にも大きな影を投げかけている。
(本文より抜粋)

目次(抜粋)
序章  博物館の「政治性」をめぐって
第1章 博物館と政治世界
  1 変容する政策課題
  2 「博物館政策」の登場
  3 皇室儀礼と博物館振興
  4 「国体明徴」運動と博物館
第2章 ナショナリズムの祭典のなかで 幻の「国史館」計画
  1 紀元二千六百年と博物館
  2 「紀元二千六百年祝典計画」
  3 幻の「国史館」
第3章 <精神性>から<科学性>へ
    科学政策・教育政策の展開と博物館
  1 科学政策の展開と博物館
  2 「科学の社会教育施設」論と「生活の科学化」運動
  3 教育政策のなかの博物館
第4章 植民地主義と博物館 
    イデオロギーとしての「大東亜博物館」
  1 「大東亜共栄圏」建設と植民地博物館
  2 幻の「大東亜博物館」をめぐって
終章  そして戦後へ

[青弓社] http://www.seikyusha.co.jp


★『週間ユネスコ世界遺産 第49号
  イエローストーン国立公園/ハワイ火山国立公園』
  定価560円(税別) 発行:講談社

未だなお、活発な火山活動を続けるアメリカ合衆国の二つの世界遺産
イエローストーン国立公園とハワイ火山国立公園について特集しています。
またロッキー山脈にある、ウォータートン・グレイシャー国際平和公園
についても紹介しています。
この国際平和公園は、
かってアメリカとカナダの国境を隔てて隣接していた
2つの国立公園が、両国の協調と親善で1つに結ばれたものです。

[週間ユネスコ世界遺産URL] http://www.kodansha.co.jp/heritage/



文化環境研究所ジャーナルが更新されました
文化環境研究所ジャーナルが10月5日に更新されました。
よろしければご一読ください。
(次回は11月5日更新の予定です。)
http://db.bunkanken.com/journal/journal.php3
[掲載記事]
1.魚のからだの仕組みと水環境との密接なかかわり
吉冨友恭(よしとみともやす)

どうして魚には「エラ」や「ウロコ」があるのでしょうか? 
水中で暮らすために、なくてはならない機能があるからだそうです。
普段何気なくしか見ていない魚について、細かな視点で観てみます。

2.まちとアートと人と 2つのアートプロジェクトの事例から
下倉久美 (しもくらくみ)

この秋開催される「代官山インスタレーション'01」と、
「立川国際芸術祭2001」という、2つの「まちづくり」を視点に入れた
アートプロジェクトについて紹介します。

3.CEATECに見るITの明日
鎌田裕一郎 (かまたゆういちろう)

10月初めに開かれた、エレクトロニクス関係の大規模イベント
CEATEC(Combined Exhibition of Advanced Technologies)で見た、
ITの明日。
IT不況とはいえ、未来の断面の一つはITの先にある。

4.テロを巡る一個人の手記から考える、
  日本人のとるべき姿勢、今後の行動など
藤崎健吉(ふじさきけんきち)

アフガニスタンに在住していた国連難民高等弁務官事務所勤務の
日本人女性、千田悦子さんから送られてきたメールを紹介します。
テロ直後の混乱したアフガニスタンの様子が伝わってきます。

5.予防薬としての博物館 同時多発テロ事件で思うこと
竹内有理(たけうちゆり)

同時多発テロ事件は、異なる文化と早急に理解を深める必要性を
改めて痛感させる出来事でした。
異文化の歴史や政治的背景と、現在問題となっている点について、
公正で正確な情報を提示することが益々重要になります。

−今号の話題−


動物を活用した観光の試み(前編)
オーストラリア フィリップ島における観光と動物保護

オーストラリアでは、動物を活用した観光が盛んです。
世界的にも有名なシドニー水族館では、
年間百万人以上の来館者をここ何年も集客しています。
主要な各都市にも魅力的な動物園・水族館といった
動物を観察できる施設が存在し、
重要な観光施設としての役割を担っています。
また動物が実際生息している国立公園や自然公園でも、
観察を目的とする観光の人気が高く、
注目を浴びる観光形態になりつつあります。
コラムは、オーストラリア南東部にあるフィリップ島の
「動物を活用した観光」についての紹介です。
自然や文化を保護するため、観光、娯楽、教育を積極的に活用する視点は、
日本の取り組みを考える上でも示唆を与えてくれると思います。
まず今号は、オーストラリア最大のペンギンコロニーである
サマーランドビーチの「ペンギンパレード」を、
そして次号では「未来型の動物園」と自ら称している
「シールロックセンター」について紹介いたします。
●毎夜ペンギンがパレードする島
フィリップ島はメルボルンの南東約140Km(車で約1時間半)、
ウェスタンポート湾の入口に浮かぶ、面積約100k?の小さな島で、
橋とフェリーによってオーストラリア本島と結ばれています。
ほとんどの人は、
毎夜繰り広げられるペンギンパレードを目当てに来島しますが、
アザラシやコアラなどペンギン以外の様々な野生動物が観察できます。
フィリップ島における「動物を活用した観光」の特色は3つあげられます。
ひとつは、観察する時期が限定されず、通年可能ということです。
ペンギンやアザラシなど繁殖時期によって
観られる数の変化はあるようですが、ほぼ一年通して観察できます。
二つ目は、観察しやすいように施設が整備されているので、
難しい観察テクニックを必要としません。
これは三点目の多くの人が同時に観察できることともリンクしています。
このような特色をいかしながら観光客にペンギンなど野生生物と、
その生息環境である自然に積極的に触れてもらい、
保護や保全に対する理解者育成することを、
この島の観光の大きな目的としています。

●ビジターセンターでパレード開始を待つ
サマーランドビーチでは毎夜、海から巣へ集団で戻る
リトル(コビト)ペンギンの様子が観られます。
ペンギンを見るため来訪者がまずすることは、
ビジターセンターで入場料13ドルを支払うこと。
上陸は日没とともに始まりますので、
それまではセンターの展示物を見学したり、
ギフトショップや、ビュッフェなどで時間をつぶします。
センターの展示は、
これから観察するペンギンって一体どんな生態?から始まり、
天敵や取り巻く生息環境、
人とどう係わり合い、どんな影響を受けているか。
またここでは、傷ついた野生動物の保護やリハビリと
調査研究を行っているので、その成果についてもわかりやすく
興味を引くよう提示されます。
ペンギンパレードだけ観て帰るのでなく、
何かひとつでもペンギンにまつわる知識を持ちかえってもらおう
というねらいがあるようです。
ペンギンの上陸が近づいてくると、ビーチへ続く
木でできた遊歩道(ボードウォーク)に向かう扉が開け放たれます。
ここから先は、一日中海で魚をとって
神経質になっているペンギンの生態に悪影響を与えるため、
カメラ・ビデオの撮影が禁止されます。
その他、守るべき注意事項は
館内で配布されるパンフレットに説明されています。
世界中から来るお客さんに対応して、
英・日・仏・独・伊・西・中・韓・マレーシア・タイの
10カ国語が用意されていました。

●ペンギンが海から上陸!
ペンギンが上陸するビーチには一切、来訪者は入れません。
そのため観察ポイントまではボードウォークを歩いて移動します。
観察のためのビューポイントはビーチに向かって、
ちょうど野球場のスタンドのように組まれており、最大3,800人収容が可能。
人々はそこに腰掛け、持参した双眼鏡で上陸の様子を伺います。
波に乗ってペンギンが数羽づつ上陸を始めました。
その姿は名前に違わずコビトの集団のようです。
まるで「達磨さんが転んだ」をしているかのように、歩いては止まり、
また歩いては止まるいう行動を続けます。
レンジャーによると一日海で泳ぎ体力を消耗しているため、
休みながらしか移動できないそうです。
来訪者のたくさんいるビューポイントに少しづつ近づき、
やがて意を決したように、巣のある場所へ一目散に歩き出しますが、
人があまり近づきすぎると
「ミヤー・ミャー」と猫の鳴き声に似た警戒音を発し、威嚇します。
スタンド席の中央、スタンドよりも高い位置には、
上陸するペンギンの様子とビジターの行動を監視する
レンジャー・ステーションがあります。
ペンギン到着とともに、マイクロホンを使って上陸している方向や、
観察しやすいポイントなどを簡単に説明し、
観察中の注意事項をペンギンの体の仕組みや行動から説明し理解を求めます。
全部のペンギンが上陸するのに繁殖期である夏の間には約2-3時間、
冬の間は約50分くらいかかります。

●独立した非営利組織がパレードをマネージメント
「ペンギンパレード」の運営は、独立した非営利組織
ネイチャー・パーク管理委員会により行われています。
パレード以外、
コアラを自然に近いかたちで観察できる「コアラ保護センター」や、
史跡として保存活用している「チャーチル・アイランド」など、
委員会に管理運営されている自然・歴史遺産を
総して「ネイチャー・パーク」と呼んでいます。
「ネイチャー・パーク」の管理運営は委員会がおこなっていますが、
この土地はビクトリア州政府のものです。
その政府は、委員会に管理運営の許可はしているものの、
財政的な支援はおこなっていないそうです。
非営利組織によって、独立した採算が可能である最大の理由は、
ペンギンパレードにあります。
一年通じてリトルペンギンの様子を観られることと、
一度に最大3,800人の対応ができることから、
年間52万人もの観光客を集め、大きな利益を生んでいます。
しかし委員会では、利益を出すことが目的ではないので、
ペンギンパレードによって生み出される利益のすべては、
フィリップ島全体の環境保護に当てられます。
ビジターセンターやビューイングポイント、ボードウォークなど
ペンギンパレードの施設にかかる建設費用はもちろん、
怪我や病気で保護されてくるペンギンの
リハビリテーション施設とプログラム、
生息地に植林をしたり、巣になる木箱を置いたりする保全活動にも投資され、
地域に利益を還元する仕組みができています。

次号では「シールロックセンター」について紹介いたします。


皆さんの「おススメ」情報がありましたらご紹介ください。
info@bunkanken.comまでお送り下さい。
ご紹介した行事等のお問い合わせは各連絡先まで、直接お願いいたします。