<文化環境研究所 News> 第28号
2001.11.3発行

今号の話題では、
オーストラリア南東部にあるフィリップ島で試みられている
「動物を活用した観光」についての後編です。
Seal Rocks Sea Life Centreを取り上げます。

−お知らせ−


クジャクの羽根・ライオンの足形など「動物の身の回り品」を売る
オークションが開催されます(横浜市立野毛山動物園)
ことし開館50周年を迎えた横浜市立野毛山動物園では、
11月23・24日にチャリティーオークションを開きます。
オークションで売り出される品は、
野毛山動物園に暮らす動物たちの「身の回り品」です。
現在、クジャクの羽根・ライオンの足形・ゾウの糞・へびの抜け殻等の
出品が予定されています。
オークションでの収益は日本動物園水族館協会を通じて、
動物の保護活動に役立てられます。

11月23日は、午後1時30分。
翌24日は、午前11時30分と午後1時30分に実施される予定です。
住所:横浜市西区老松町63−10
交通:JR 根岸線・横浜市営地下鉄・東急東横線桜木町駅下車
   徒歩15分
   京浜急行日ノ出町駅下車徒歩10分
電話:045-231-1307(横浜市立野毛山動物園管理事務所)
[野毛山動物園] http://www.city.yokohama.jp/me/green/noge/index.html
[日本動物園水族館協会]  http://www.jazga.or.jp/



ドメインネームのトップレベルドメインに「.museum」が誕生
日本国内で現在多く使われているドメインネームの
トップレベルドメインは、「.jp」です。
(最近では「.com」も良くみかけます)
このドメインネームのトップレベルドメインに
「.museum」が、11月に登場するそうです。
このドメインを取得できるのは、美術館や博物館に関連する団体や個人。
ドメインを管理する機構として、
「Museum Domain Management Association」(MuseDoma)が選定され、
初の「保証人付き」トップレベルドメインとなる模様です。
2001-10-19  Mainichi Dailymail Internetより転載....
◇ 新たなトップレベルドメイン「.museum」、11月開始
ドメイン名管理の非営利組織ICANNは18日(米国時間)、
新しいトップレベルドメイン「.museum」の管理機関として、
「Museum Domain Management Association」(MuseDoma)
と契約を結んだと発表した。
同ドメインは、国際的なミュージアム・コミュニティーの
需要に応じたもので、初の「保証人付き」トップレベルドメインとなる。
美術館、博物館、関連する団体や個人が同ドメインを取得できる。
保証人付きのドメインとは、
MuseDomaのような方針決定組織が調整を行うドメイン。
MuseDomaは公平で透明な方法で運営されている管理団体で、
本物の美術館や博物館、関連する団体や個人にのみ、
「.museum」ドメインの割り当てを行う。
既に500館以上の美術館や博物館がドメインを申請しており、
11月に同ドメインの運用を開始する予定。
MuseDomaは、「.museum」ドメインを管理するために設立された非営利団体。
その設立メンバーは、フランスのパリに本部を置く国際博物館会議と、
ロサンゼルスのゲッティー財団。

[Museum Domain Management Association] http://musedoma.org/




月刊社会教育11月号で、
「地域」「人権」をテーマにした博物館実践の特集が組まれています

『月刊 社会教育11月号』(定価700円税込み)で、
「地域」や「人権」をテーマに設立した博物館が特集されています。
以下、目次の抜粋です。
【特集 21世紀の博物館〜「地域」と「人権」】
20世紀の諸課題と21世紀の博物館/君塚仁彦
大阪という地域と人権博物館(大阪人権博物館)/小島伸豊
ハンセン病資料館の現状/佐川修
人権のふるさと水平社博物館からの発信/仲林弘次
やんばる名護博物館/山本英康
「地域」の博物館(南風原文化センター)/大城和喜 
戦争の原因を追求して、真の平和を確立するために
(ヌチドゥタカラの家)/高岩仁
複合研究施設・「歴博」の役割(国立歴史民俗博物館)/新井勝紘
ギャラリーTOMあるいは手の行方/岩崎清
美術館のことを考え始めた日本の美術館/貝塚健
問い合わせ先:株式会社国土社内「月刊社会教育」編集委員会
住所:〒112-0015 東京都文京区目白台1-17-6
電話:03-3943-3721
[月刊社会教育]http://member.nifty.ne.jp/GEKKAN-SHAKAIKYOUIKU/index.html

−今号の話題−


動物を活用した観光の試み(後編)
オーストラリア フィリップ島における観光と動物保護

●シール・ロックスとシール・ロックス・シーライフ・センター
「シール・ロックス」は、フィリップ島西端約1.5km沖に位置する
オーストラリア最大のオットセイのコロニーです。
繁殖期である10月から12月は上陸のピークに達し、
その数最大1万6千頭にも及びます。
次に紹介する「シール・ロックス・シー・ライフ・センター」
(以下:センター)は、シール・ロックス全体を見渡す高台にあり、
一年間通じてオットセイの生態を観察できることで有名です。
センターでは「オットセイを始めとする野生動物に極力負荷を与えない」、
そして「可能な限り人との距離を縮め、触れあう」
この一見矛盾しそうに見えるポリシーを掲げ、運営しています。
動物園・水族館と同様「野生動物」をテーマとしていますが、
施設中、生きた動物は一切存在しません。
それでは、一体どのようにして触れあっているのでしょうか。

●時代とともに進化する技術をでき得る限り使う
館内に入ると、まずこの周辺で見られる潮溜まりを再現した
「プール・オブ・ライフ」が目に入ります。
ベースとなる岩はFRP(繊維強化プラスチック)製で、
展示されている小動物も、レプリカか映像により表現され、
生きた生物はいません。
この潮溜まりまでは、無料で見られますが、
ここから先は入場料が必要になります。
有料ゾーン最初の展示は「発見の旅」です。
シールロックが何故
オーストラリア最大のオットセイのコロニーになったかと、
人間との関わりの歴史を
この地域を探検したジョージ・バスの物語と重ね合わせ、
人形仕立てのショーで提示します。
シヨーは自動で動くボートに乗って進められ、
自動音声による解説が行われます。
以降、オットセイやホオジロザメ・海鳥など
シール・ロックにかかわりの深い動物たち個々の
ライフサイクルや生息環境と、
人と関わることでどう影響を受けているか、
色々な展示物を用いて展開します。
施設的に一番注目を浴びているのは、
人手の入らない自然のコロニーで、
日々、繰り広げられるオットセイの暮らしをリアルタイムで映し出す
「シール・ウォッチ・パノラマ」です。
映像はコロニーから25M離れた場所に設置された
高さ18Mのカメラ塔から海底ケーブルを通して配信されるもので、
このカメラは遠隔操作により様々な角度に動かせます。
送られてきた映像を大型スクリーンに映し出し、
オットセイの現在の様子をインタープリターが解説を行います。
また、海中には水中カメラと集音機を設置しているので、
水中での様子も伺うことができます。

●現実に起こっている問題を積極的に取り上げる
センターの様々なインタープリテーションでは
オットセイやホオジロザメなど、
この海域に棲む生き物たちの身に、
今何がに起こっているのかを積極的に取り上げています。
導入の展示にあたる「発見の旅」の最後のシーンに近づくと、
流動廃棄物や流出されたオイルが大敵であること、
海をきれいに保つため私達はどうすればよいか
大きなメッセージを発信して、終了します。
その後、個々の生き物を紹介する展示が続くのですが、
それぞれが抱えている問題点は、各展示でブレークダウンされます。
ホオジロザメの展示で例えれば、
この海域の食物連鎖の頂点にホオジロザメがいることで、
生態系のバランスが保たれていることや、
鮫に襲われて死ぬ人間よりも、
人間の手にかかって死ぬ鮫の方がはるかに多く、
もはや絶滅の危機に瀕していることなど、
動物に関わるの細かい知識の提供だけでなく、
我々の生活とどのような接点があり、
どう付き合っていくべきかの視点に重点が置かれています。
学校や教育的な見地から来場するグループで
もし希望があればインタープリターによる解説も行われます。
「オットセイと流動廃棄物」についてのインタープリテーションでは、
釣糸や漁網がオットセイの首に引っかかったまま暮らしている例や、
人が捨てたゴミ袋を間違って食べてしまい呼吸困難になると言った
実際に発生している問題を、
実物を始めとする様々な資料を交え解説します。
インタープリターはオットセイの首に絡んでいた漁網を手に
「このような網がみんなの首に入ったらどんな感じ?」を問い、
海に捨てたものは全て、生き物の危害の対象になることを説明し、
海に物を捨てない様に促します。

●民間の営利を目的とした企業が運営
センターの開発運営を行う企業体
Seal Rocks Victoria Australia Pty.Ltd.(以下:SRVA)は、
1993年オーストラリアの様々な企業や個人投資家が集まり結成された
営利を目的とする民間企業です。
現在では年80万人以上の訪問者があるシールロック地域ですが、
1998年に2,700万ドルかけたこのセンターが建設されるまでここには、
古ぼけた売店しかありませんでした。
SRVAの使命は、この地域において日々進歩する技術を活用し、
来訪者に質の高い観光を提供することです。
同時に地域固有の植物と動物の長期的な保護にも協力を行っています。
センターの土地はペンギンパレード同様、
ビクトリア州政府が所有しています。
SRVA は州政府と土地の借用に関わり、
25年間のリース契約を締結、
年間数千万円単位の使用料を収めています。
今、SRVAでは1,150万ドルかけて、
センターからシールロックまで海中で結ぶトンネルを計画しています。
トンネルは海底よりも30m下に掘られ、
コロニーにさしかかったところで、海中、半水面、
陸上での動きをガラス越しに見えるように
施設をプランニングしているそうです。
当然の事ながらこれを行うためには、
環境に対する影響が計算されなければならないので、
その調査と研究をしながら進めようとしていますが、
現在の州政府からは環境に与える影響が危惧され、
許可が下りない状況にあります。

●調査研究の成果を地域にフィードバック
最後に、石油会社Essoがスポンサーとなった「Seal Project」を
紹介して終わりたいと思います。
シールロック周辺海域で操業する漁業関係者が、
漁獲量減少の原因がオットセイにあると思い込み、
駆除しようという動きがありました。
そこでEssoがスポンサーとなり、
オットセイ四頭にそれぞれ無線機をつけ、
行動範囲を追跡しました。
調査の結果餌を取る場所と、漁場が重なっていることが判明、
さらに詳しく調べるためオットセイを捕獲し、腹を切開してみると、
中に入っていた魚は全て商品価値のない魚であったことが分かり、
オットセイが漁業に与える影響が少ないことが解明されました。
このような地道な研究者たちの研究成果が、
観光や娯楽を行うための裏づけだけではなく、
人々の生活の現場に日々反映されていることが、
フィリップ島における動物を活用した観光の試みを可能にしています。
これだけ大規模に実施されているため、
地域住民の参加がいまひとつ見えにくいのは事実ですが、
日本においても、動物を地域の文化財・資源として認識し、
観光や活性化の拠り所にしている場所はたくさんあります。
その活用するための方策を様々な地域で検討が行われているようですが、
先進事例としてフィリップ島で行われている試みは、
参考になるのではないでしょうか。


Phillip Island Penguin Parade
http://www.penguins.org.au/index.html
Seal Rocks Sea Life Centre のアドレスは、
http://www.phillipisland.com ですが、
11/3現在休止状況にあります。



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