■□「奄美パーク」にみる観光拠点の可能性(後編)
前号に引き続き「奄美パーク」の展示施設「奄美の郷」について
紹介いたします。
■奄爺(アマジイ)が縁側に座る「遊びの庭」
「総合展示ホール」の出口にある「遊びの庭」コーナーでは、
加計呂麻島(かけろまじま)の
諸鈍(しょどん)という集落にあった昔の民家が移築されています。
自由に座敷へあがることができるこの民家には
昔の遊び道具や大島紬の機織機などが並べられ、
手に取ったり、遊んだり、動かすことができます。
縁側には奄爺(アマジイ)と名づけられたおじいさんの人形が
『まぁ、腰かけて昔話でも聞いていかんかね』という感じで座っています。
おじいさんの隣には「キセルや湯のみが載せてあるお盆」が置かれており、
よく見ると、ここには奄美の昔話をきけるスイッチが仕込まれています。
スイッチを押すといくつかの奄美の昔話を、
標準語もしくは奄美の言葉どちらかを選んで聞くことができます。
おじいさんのまわりには、
昔の奄美の様子が撮影された写真が綴られているアルバムや
鶏飯(けいはん)、油そうめん(あぶらそうめん)と言った
郷土料理の作り方をまとめたレシピなども用意されています。
■奄美のことばミニ講座
奄美では方言のことを島口(シマグチ)と読んでいます。
母音の三音(a.i.u.e.oのeがiに、oがuに変化)が
奄美のことばの特徴と言われていますが、
各島、集落毎にアクセントやイントネーションが異なる場合もあり、
同じ島でも通じにくいことがあったようです。
『むぎわらぼうし』という単語で比較してみると
喜界島 → むんぎゃらはっとう
奄美大島 → むぎわらぶし
徳之島 → むんぎゃらかさ
沖永良部島 → むんぎゃらぼうし
与論島 → むんじゃらぼうし
五つの島全て、違った言い方をしています。
「遊びの庭」には、この奄美のことばに関する展示が用意されています。
「奄美のことばミニ講座」とネーミングされたこの展示は、
奄美群島五つの島(喜界島・奄美大島・徳之島・沖永良部島・与論島)の
言葉の違いについて、パソコンを使って紹介するもので、
「島唄・台風・魚つり・さとうきび・道を尋ねる」という
五つの場面の島口による会話を
アニメーションと音声で進行しています。
画面には標準語による字幕が入りますが、
それを目にしないで、言葉だけ聞いていると
単語すら聞き取ることができないかもしれません。
■観光客がイメージする奄美を展示化
「奄美の郷」の主要なターゲット層は島を訪れる観光客です。
観光客に対して、奄美の自然や歴史・文化をコンパクトに紹介し、
興味や刺激を与えると同時に、
「奄美ファン」になって帰ってもらうことにあります。
ですからこの施設では、博物館のような学術性の高い資料を並べたり、
専門的な情報について提供されません。
展示にしてもコンセプトやストーリー中心の構成というよりは、
サンゴ礁の海、マングローブの森、島唄といった
観光客が奄美をイメージし、興味を持ちそうな要素をまず抽出し、
その要素をグラフィックや造型、装置など
どういった展示手法を用いることが効果的か検討した上で、
ゆるやかに自然や歴史・文化などジャンルを分け構成しているようです。
この場所で提供すべき以上の情報を与えない、
あまり特殊で複雑な装置や手法は用いない、
全体的にみるとシンプルな展示という印象ですが、
来館者が展示を見てみたい、動かしてみたいといった
ツボが押さえられているため、心なしか来館者が展示を見ている時間は、
他の施設より長めに感じました。
■島のビジターセンターとしての役割を担う施設
奄美パークは、空港から島内最大の都市・名瀬や他の観光地に行く場合、
必ずと言って良いほど通過するポイントにあります。
同時に、奄美空港から車で約五分という距離にあることから、
集客的に非常に有利な場所に立地しています。
内容的にも「奄美がどのような場所であるか」
アウトラインを知るには最適な施設と言え、
島全体のビジターセンターとしての役割が期待されています。
この奄美パークに、二点ほど加えていただきたい機能を提案し、
終了したいと思います
ひとつめは、「旅の具体的な行動を手助けしてくれる人の配置」です。
展示で刺激を受けた人が、その場所に行ってみたいと思えば、
目的地までの道順や道路状況などを知りたいと思うでしょうし、
また体験してみたいことがでてくれば、
どこにいったらそれができるかなどの情報を入手したいはずです。
人が集まりやすい場所に、この観光拠点を作ったわけですから、
次は、ここから観光客をどうやって各地にばらしていくか
検討する必要があります。
具体的なアイデアとしては、ホテルのツアーデスクのように
観光客個々のニーズに応じた奄美の情報を提供ができる
人材の配置を含めた仕組みづくりが考えられます。
ふたつめの提案は
「売店に、いま以上奄美の魅力的な商品をそろえる」ことです。
沖縄の食品や工芸、CD・本など購入できる「わしたショップ」では、
現在、札幌・銀座・大阪・福岡にも店を構えています。
銀座にあるショップをよく覗くのですが、
一個あたりの商品単価が割と高いにもかかわらず、
平日の昼間でもかなりの人がレジに並び、
お気に入りの商品を購入していきます。
地域独特の商品だからあまり売れないというイメージは過去のもので、
体に良い、おいしい、美しい、センスが良いなどの
条件をクリアした商品は、多少値がはっても購入されると言うことを、
奄美にも近い沖縄の物産を扱う「わしたショップ」では証明しています。
空港からの距離を考えると、
売店にもっと魅力的な奄美の品物が豊富に揃っていれば、
到着時だけでなく、出発時にも再び
観光客が訪れる可能性が大きいのではないかと思われます。
まだ充分な可能性の余地がある施設ですので、
今後の動きに注目していきたいと思います。
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