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| さて評価に関してですが、ここで「評価」という言葉の定義をしておきたいと思い
ます。ミュージアム・エバリエーターという職種がアメリカにはありますが、日本に
はこれに相当するものがありません。博物館の評価とは、徹底した定性的調査と数量
的なデータの分析が伴うものであり、検証に近い作業です。どの展示にも使える評価
法は存在せず、展示の度に評価法を考案していくものです。展示プランナーの意図が
来館者にどれだけ伝わっているのか。来館者へのインタビューやアンケート、観察に
よる数量的データを基に総合的に把握して、その事業の出来を判断する検証作業を評
価と呼びたいと思います。世間一般で評価という時、いま申し上げたものとは違うよ
うです。例えば新聞に美術評が載りますが、あれは評価というよりは、専門家個人の
経験や考えに基づく意見を記した「批評」だと思います。そうではなく、検証作業こ
そ評価であるとここでは定義したいと思います。アメリカでは1970年ぐらいからこう
した動きが盛んになってきました。特別展示や教育プログラムに対して、企画段階で
の事前評価と、展示室の試作を作った段階での形成的な評価と、出来上がったものが
意図通りにできていて、来館者にきちんと伝わっているかどうかという総括的評価の
三段階に分かれているそうです。 本日は三番目の総括的評価の実態についてお話しします。北海道開拓記念館でアイ ヌ資料に関する評価調査が、平成9年から文部省の科研費で行われています。展示評 価については、平成11年から具体的な調査が始まりました。私自身も参加して総括的 評価をやっています。北海道開拓記念館の常設展示室は二階建てになっていて3000u あります。今回、私たちが評価の対象としたのは175uの小さな空間です。私自身、 文化人類学が専門ですから、今回のこのプロジェクトに参加しました。去年から私と 記念館の学芸員2名で試行錯誤しながらやっていますが、7メートルかける25メート ルぐらいの空間、動線にして30〜40メートルしかない小さな空間の中で、それぞれの 学芸員が何を伝えようとしたのかをまず調べました。そして来館者は展示室内を通る 間に、学芸員が伝えたかった情報をどれだけ得ることができたのか。北海道に住んで いる人たちはアイヌに関する情報を元々かなり持っていらっしゃいます。そこで展示 されている情報は、既に知っている情報なのか、それともここに来て初めて知った情 報なのかという識別もしなければいけません。それぞれのコーナーにどれぐらい立ち 止まっていたのかということも含め、調査しました。 午前中の山本先生のお話の中で「モナリザ」の展示の話題が出ました。目の不自由 な人であっても、「モナリザ」の実物を前にして、その雰囲気を体感することが大事 だという趣旨のお話でした。また井上館長も「博物館に来て、力をもらった」という 来館者の声をご紹介されていました。我々が当初考えた評価法は情報伝達度の測定だ けですが、これは博物館の魅力や価値のごく一部しか見ていないのだと思います。来 館者に与えるインパクトには展示からの情報伝達以外にも、雰囲気や何か分からない 力といったものがあるでしょう。私たちはそうしたものを「展示の価値」と名付けて 調べようと試みました。この試みは調査手法上の問題があったため、今回その結果を ご紹介できないのですが、今後は展示を見終わったお客さんにインタビューするなど の方法で、情報伝達以外に、展示からお客さんはどんなことを考えた、感じたかを今 年度は調査する予定です。 展示空間におけるお客さんの滞在時間は平均すると4分30秒ですが、一番多いのは 2分ぐらいです。30〜40メートルの動線を2分で通り過ぎる人が最も多いという結果で す。30分ぐらいかけてゆっくりと見てくださる人がいたため、この時は平均値が上が りましたが、実際には2〜3分が最も多い分布範囲だと思います。展示室の状況を説明 します。実物大のジオラマで復元した、「チセ」というアイヌの伝統的な住居が中央 にあります。チセの中には炉や器があったり、上からサケが干してあるなど、当時の 暮らしを再現しています。クマ送りに関わる儀礼の道具やクマの頭骨といった資料も 展示しています。 |
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