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 学芸員の意図がどれだけ伝わったのかを調べるため、再認テストを作って観覧者に やってもらいました。この質問票自体が試作段階であり、これで本当に良いのかどう かわかりませんが、設問のレベルを二種類考えました。例えば、写真を見せて「この 植物からとった毒を矢の先端に付け、狩猟につかいました。何という植物でしょう」 というように、具体的にそのものの名前を答えてもらうような単純な設問と、「クマ の霊魂を神の国に丁重に送ることをなぜアイヌの人たちはやってきたのでしょうか」 というようにアイヌの観念的・抽象的な世界観や信仰を問う設問の二種類です。例え ば、最初に例をあげたように、トリカブトという植物の写真を見せて「これは何でし ょう」という設問を出しました。「これは絶対にわからないだろう」と我々は思った のですが、意外と正解率が高かったのです。というのは、かってトリカブト殺人事件 が起き、TVのワイドショウで取り上げられたため、特に関西の人がこれを見ると 「あーっ、これがあのトリカブトや!」と大騒ぎになるほどでした。そのせいか、こ れは正解率が3割ぐらいでした。しかし、アイヌ文化を理解する上で特に欠かせない 資料のアイヌ語名や、アイヌ以外の北方の先住民族名を問う設問は正解が5%程度で した。また「なぜ、クマ送りをするのか」という設問の正解率は18%程度と以外に高 く出ました。全体で平均すると16%の正解率でした。なお、正解した人の中で以前か らそのことを知っていたと申告した人は、正解率の計算から除外していますので、こ の展示を見て初めてあることを知った人が、各設問ごとの平均で16%だったというこ とです。数字が高いか、低いかは別にして、こういう結果となりました。
 この調査自体、調査を継続している最中で、まだ充分分析していないので、詳しい お話はできないのですが、いくつか分かってきた面白い結果について申し上げます。 トリカブトの設問については、展示コーナーの前に40秒以上立ち止まっていないと正 解しないということが分かりました。「なにか植物がある。これには毒があるのか。 トリカブトというんだ」というように理解するまで時間がかかり、立ち止まる時間が 40秒未満の観覧者では正解が出ませんでした。またクマ送りのように観念的・抽象的 な設問については、展示を1分以上見ていないと正解は出てきませんでした。これは たまたまなのかもしれませんが、伝えようとする情報量や抽象度によって、最低限立 ち止まってもらわなければいけない時間の長さがあるのではないか。そういうことが わかりました。
 ほかの博物館の総括的評価をご紹介します。平成9〜10年に江戸東京博物館で、将 来の常設展示リニューアルを見据えて、評価調査をやっています。この調査はどれだ け正確に伝達されているのかというよりも、来館者が実際にはどんな風な動線で展示 室を歩いているのか。まったく通過していないエリアがないのか。どんなニーズを持 っているのか。このようにお客さんの実態をおさえるのがメインであり、いわゆる来 館者調査とそこから導き出される短期的な改善プログラムの実施とも位置づけること が出来ます。以上が評価手法の一つ目の総合的評価の紹介です。
 次の評価手法をご紹介しますが、これはベンチマークスです。博物館学の文脈とは 異なり、公立文化施設や地方自治体で行われている行政評価の立場からやってみたら どうなるのかを論じたものです。私は評価の研究を始めた2年ほど前から、シンクタ ンクのマッキンゼーが主催している、行政評価に関する研究会である「行政経営フォ ーラム」に定期的に参加しています。その結果、地方自治体がこの分野においてもの すごい実績と情報を積み重ねつつあることがわかりました。博物館ももう少し考えな ければいけないということを痛感させられました。ちなみに行政評価という面でいえ ば、都道府県レベルでは三重県と静岡県が実績や知名度では群を抜いています。他の ところもそれを参考にして試行錯誤しているのが現状です。
 行政評価とは、法令遵守主義から目の前の顧客・住民のニーズ志向、または予算消 化主義から効果効率主義、お金の使いがい(バリュー・フォー・マネー)重視に移行 するために、行政による数値の管理主義の考えを導入するものです。その一番分かり やすい手法として、ベンチマークスがあります。お金の使いがいについて、先ほど井 上館長がまさにぴったりのことをおっしゃってくださいました。「玩具博物館の入館 料は500円だが、高くなかったという意見の入館者がほとんどだった」というお話が ありましたが、これはまさにお金の「使いがい」「払いがい」があったことを意味し ています。

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