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| 今回の演題を「ユニバーサル・ミュージアムの理念とバリアフリー施策」という
タイトルといたしましたが、私としてはバリアフリーという考え方を特に持ってお
ります。レジュメの冒頭に「すべての人のために。ユニバーサルの理念」と書いて
あります。ユニバーサルという理念はよくわかりますし、確かにすべての人のため
のものです。そうした博物館が達成できれば、それにこしたことはないのですが、
それを達成するにはなかなか一筋縄ではいかないところがあります。そのためには
バリアフリーという視点を持たなければいけないのではないか。そういった立場で
私自身、いろいろな勉強をしてまいりました。 今回、レジュメには「ユニバーサル・ミュージアムに求められる施策」と「聴覚 しょうがい者と博物館」の二つの論文を含めておきました。その他に、私は國學院 大學にいた時、「博物館のバリアフリー計画」という論文を書いております。本来、 皆様にそのコピーをお渡しすれば良かったのですが、70ページを超す大部なもので あるため、今回は用意できませんでした。もしご希望の方がいらっしゃいましたら、 受付でその旨をお伝えいただければ、後ほどお送りさせていただきます。 さてユニバーサル・ミュージアムとは何か。今年の3月まで神奈川県立生命の星・ 地球博物館の館長をされておりました、濱田隆士先生が提唱された言葉です。「す べての人の博物館」、これは理想として掲げるにふさわしい言葉であり、それを達 成するための考え方の一つとしてバリアフリーという施策が位置づけられます。 バリアフリーとは福祉の世界で作られた言葉ですが、一方ユニバーサルは必ずし も福祉や博物館の世界で特定の言葉ではありません。英和辞典を引けば「宇宙の」 とか、「万人の」という意味が書いてありますが、この場合、「宇宙の」という意 味はもちろんありません。「万人の」ための博物館という意味で考えるべきですが、 そのすべての人の中に「しょうがい者」も必ず含まれなければいけません。 レジュメを見ていただければおわかりのように、私は「障害者」を記述する時、 「しょうがい者」とひらがなに置き換えております。私が以前読んだ、河東田博さ んの『スェーデンの知的しょうがい者とノーマライゼーション』という本の中で、 「差し障りがあって、害がある」と記述する「障害者」に代えて、ひらがなで「しょ うがい者」と書いてあるのを見ました。現在流布している「健常者」「障害者」と いう言葉に代わるものがありうるのかと自分なりに考えてみたわけですが、なかな かすっきりする言葉がありません。「しょうがい者」が一番良いとは思いませんが、 今のところは「差し障りがあって、害がある」という表記方法は避けようと思って おります。このように私は「しょうがい者」というひらがな表記にこだわっており ます。漢字で書く場合、「障碍者」と表記することもあります。ただ、この碍とい う漢字にも、妨げという意味があります。これもなかなかしっくりしないため、私 自身はひらがな表記にこだわっております。そうすると害があるという意味をぬぐ い去れると感じており、そういったこともご理解いただければと思います。 ユニバーサルという言葉は一般的な言葉ですが、福祉の世界では最近、ユニバー サル・デザインという言葉が使われるようになっております。また、日本ではバリ アフリーという言葉がよく使われております。ではユニバーサル・デザインとバリ アフリーではどちらが上なのか。最初にバリアフリーという言葉があり、その後で ユニバーサル・デザインという言葉が出てきたわけです。バリアフリーとは1974年 に建築の世界から出てきた言葉です。ユニバーサル・デザインは1970年代にはロナ ルド・メイスという方が使い始めていたのですが、90年代に入ってようやく定着し 始めた言葉ですから、両者の間には20年近くの差があると言ってもいいのです。 こういう論理的な話をした場合、後から出てきたものの方が優れていると考えが ちです。ではユニバーサル・デザインの方が本当に優れた考え方かというと、私は 疑問に思います。ユニバーサル・デザインとバリアフリーを説明する時、端的な例 として、段差があるからスロープを作るという考え方がバリアフリーです。それに 対して、最初から段差を作らないでフラットにしておくのがユニバーサル・デザインの考え方です。最初から段差を作らないのは理想的ではありますが、すべてがそうした建築物にできるかというと正直な話、不可能です。極端な話、世界遺産である姫路城をユニバーサル・デザインでできるかというと、それは不可能です。バリ アフリーの考え方でやるしかありません。 |
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