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| また、東京都美術館の例では、「視覚しょうがい者」が絵画の特別展に見学に来
た時、テストケースとしてどういう方法をとったかというと、男女や世代を問わな
い5〜6人のグループとその人を一緒に歩かせて、その展示の前でその人たちがそ
の絵をどう思ったのか感想をその「しょうがい者」に自由に話してあげたそうです。
見方や感じ方は人によって当然違いますから、それらの話を聞きながらその人は自
分の頭の中で再構成して、その絵がどういうものなのかを感じとることができたそ
うです。このことが成功例として文献に紹介されておりましたが、このように触れ
なくても、視覚以外の感覚を応用できなくてもやれる方法があるのではないでしょ
うか。視覚に頼る展示とか、視覚以外にもその場で感じてもらう展示のあり方を今
後研究していく必要があるのではないかと思います。 音声ガイドを使うと「視覚しょうがい者」の方にも有効であるという考え方もあ りますが、そういう話を聞くと「では『聴覚しょうがい者』の方はどうするのだろ う」と私などはすぐに思ってしまいます。そういった保障が意外と忘れられがちで す。音声ガイドを作ると同時に、視覚で同等の情報を得られるような冊子も用意す べきでしょう。例えば静岡県立美術館のロダン館では受付のところに音声ガイドと 一緒に「耳が不自由な方のために音声ガイドと同じ内容の冊子を用意しております」 という案内が出ております。やはり、同じような情報の保障をしなければいけませ ん。「視覚しょうがい者」のための施策を考える上で音声ガイドは有効であります が、ややもすると「聴覚しょうがい者」に関してはないがしろになってしまうわけ です。そういったことを払拭するためには「しょうがい」別ではなく、先ほど申し 上げた四つの障壁別に考えるべきではないか。音声ガイドを作った時、それでは保 障できない人がどれだけいるのかを考えるべきではないかと思います。 別の視点で言えば、最近の博物館では映像が多くなってきていますが、映像には 音声が入っているのが当然だという思いこみがあります。しかし、中には映像だけ が流れており、音声はまったく入っていないものもあるわけです。同じ博物館でも 音声が入っている映像情報と入っていないものがあることもあるわけですから、 「聴覚しょうがい者」はそれを的確に区別することができないわけです。 例えば東北歴史博物館では映像に音声が入っていない場合、「この映像には音声 が入っておりません」という表示がされております。何を意図してそうしているの か正確にはわかりませんが、おそらく映像には音声が入っているものだという先入 観に対して説明をしている例だと思います。いろいろな「しょうがい」をふまえた 上で、様々な場面でどのようなバリアができるのかを考えていく必要があると思い ます。 私の場合、「博物館では文化・情報面の障壁を第一番目に考えるべきだろう」と 思って、こうして取り上げてきたわけですが、もちろん物理的障壁についても考え ていかなければいけません。物理的障壁は、要は建物をどうするのかについてです から、博物館に限らず、すべての建物に関係することです。だからといって建築関 係者に任せておけば良いのかというと、意外とそうではないと思います。その建物 を使うのは博物館の人間ですから、その人たちが使える建物であるべきことも認識 すべきでしょう。 物理的障壁を解消するために、ハートビル法という法律があります。正式名称は 「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」 です。これによって改善している面もありますが、そうではない例もあります。 ある博物館では、入り口が二階になっています。もちろんハートビル法の認定を 受けておりますから、それなりの配慮はされております。一階からエレベーターで 上がることができ、二階から一階に降りてくる形で展示を見ていくのですが、10メ ートル四方の縄文時代の集落の模型があり、その周囲をスロープでゆっくりと何十 メートルも廻りながら一階へと降りてくる構造になっているのです。 ハートビル法の認定を受けているのですから、高低差75センチごとに踊り場、つ まり水平面を設けているのです。基準や数値自体はクリアしているのですが、何十 メートルもスロープを降りてくる状態で、果たして車椅子の人は模型を満足に見る ことができるのでしょうか。たぶん、そうではないと思います。どんなに緩やかな 傾斜であったとしても、スロープは緊張感を生み出すものでしかありません。ハー トビル法をクリアしているから、果たして良い博物館や展示になっているのか。模 型の周囲をスロープが取り囲んでいる状態を見た時、私ははっきり申し上げて、そ うとは思えませんでした。 |
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