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| 以上のことをまとめて申し上げますと、「バリアフリーは『しょうがい者』のた
め」という考え方が一般にあります。もちろん、それを中心的に考えるべき時もあ
ると思いますが、このバリアフリー施策とは「しょうがい者」のためだけではなく、
すべての人のためであり、それでこそユニバーサルという考え方につながるのでは
ないでしょうか。点字で解説書を作るのは「視覚しょうがい者」のための施策にな
るし、手話解説を導入するのは「聴覚しょうがい者」のためという考え方もありま
すが、スロープを作ることはベビーカーを押す場合にも有効なわけです。 つまり、バリアフリー施策は必ずしも「しょうがい者」のための施策ではなく、 今後迎える超高齢社会も睨んだ上で有効な方策であるわけです。日本の「障害者観」 を更に向上させて、皆が等しく楽しめる博物館づくりがなされるようになるべきで はないでしょうか。 では、それを実現させるために今後どのようにしていけば良いのでしょうか。私 自身もいろいろと考えているのですが、今までどういうことがやられていて、他に どういう方法がありうるのか考えていかなければなりません。建築的なバリアフリ ーのチェックリストができていますし、私自身もどういうチェックリストがありう るのかと考えるのですが、個人的にはなかなかできないわけです。こういう研究会 や各都道府県の博物館協会、あるいは地域の博物館の集まりなど、きっかけは何で も良いのですが、いろいろな機会を通じて現場で実際にやられていること、やられ ていないこと、今後必要なこと等を取り上げて、皆の力でどこまでできるのかを考 えてみるべきではないでしょうか。 そのチェックリスト、努力目標を作って、それがすべて達成できればもちろん良 いのですが、「自分の館ではどこまでできるのか」という正確な判断もまた必要だ と思います。博物館の面積や予算、運営状況の違いがあるでしょうから、「チェッ クリストができた暁には、自分たちはどこから始めるべきなのか」も考えなければ いけないでしょう。 「国際しょうがい者年」の時、宮城道雄記念館では運営上の問題から、「身しょ う者」用トイレを作るのか、エレベーターを作るのかという究極の選択を迫られま した。結局、エレベーターを諦めて、「身しょう者」用のトイレを作りました。そ ういう実例があるのですから、「エレベーターが作れなかったから悪い」とは一概 には言えないと思います。それぞれの博物館が「自分たちはどのようなサポートを とれるのか」とそれぞれ判断してやっていくべきではないかと思います。 こういったバリアフリー施策は公共機関それぞれがやるべきであり、博物館だけ の問題ではないと思います。しかし、博物館は生涯学習機関のセンター的な役割を 求められているわけですから、公共機関の先導的な立場でやるべきではないでしょ うか。あらゆる公共機関の見本的な立場でやるべきだと思います。実例も増えてき ましたが、やるべきことはまだまだありますし、本日ご参加された皆様が知恵を出 し合って、取り組まれていくべきではないでしょうか。 私は理論的な展開を専門としておりますが、やはり現実をもっと見るべきだと思 います。例えばこの四月に熊本県の知事になられました潮谷義子さんは福祉の現場 出身の方なのですが、「理屈や理論、構えを超えて、体験がそのすべてである。体 験の中から喜びや真実が生まれてくる」とおっしゃられております。まず現場を見 なければいけない、現場が理解できなければいけない、と。 始めからユニバーサルにしようとするとなかなか難しい面がありますから、すぐ にはできないことがあるかもしれませんが、まず実践してみて、そこから改良して みてはどうでしょうか。最初からユニバーサルにすることは難しいわけです。ユニ バーサルと思ってやってみてバリアができたならば、次はバリアフリーの考え方で やれば良いわけです。 だからこそ、ユニバーサル・デザインとバリアフリーが対等な考え方として、そ れぞれがそれぞれの場面に応じて使い分ければ良いと思います。ユニバーサル・デ ザインとバリアフリーそれぞれが補完し、刺激しあうことで、理想とするユニバー サル・ミュージアムに近づくのではないでしょうか。どんなことをやっても、いず れまたバリアができるかもしれませんから、常にそういったことに関心の目を向け て考えていくことが必要だと思います。 いずれにしても福祉の視点ではなく、最近よく言われている博物館経営論にしっ かりと根ざした研究がこれからなされていくべきだと思います。私自身もそうした 研究をしている最中であり、論文等を書いておりますが、まだまだ足りない部分が あります。皆様の経験を基にしたお考えをお聞かせ願えると、考察を更に深めるこ とができますので、もしご意見等がございますようでしたら、有り難く頂戴いたし たいと思います。 |
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