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| 3. | Front-end Evaluation (企画段階評価) |
| 展示企画の最初期の段階で行われる評価で、1986年にScrevenによって展示評価のひとつとして体系化された。Front-end
evaluationが行われるようになった背景には、行動科学や認知科学の分野の影響があるという。つまり、展示なり教育プログラムなり、ある経験を通して学習が起こるのは、学習者が、新しい経験と学習者自身のもっている知識や過去の経験との間に接点を見出すことができたときと考えられるようになったのである。展示を見にやって来る利用者たちは、新しい情報で満たされるのをまっている空の器ではない。すでに自分がもっている認識(知識や、関連する体験、誤認識など)と関連づけながら展示を見ていくのである。利用者がすでにもっているものとの関連において学習が起こるのであれば、展示を開発する者は、利用者が関連づけをしやすい方法で展示をつくるように工夫する必要がある。そう考えると、展示物という具体的なかたちをとる前に、展示が扱うトピックや展示案に対する利用者の反応を調べることは、展示開発に有益な情報を提供してくれるはずである。 Front-end evaluationでは、展示が扱うトピックについて、利用者が何を知っているのか、何を知らないのか(誤って認識していることは何か)、そして、何を知りたいと思っているのか、を尋ねるのが一般的である。例えば、「地球温暖化と聞いて何を思い浮かべますか?」という質問によって、利用者の地球温暖化に関する知識や、誤認識を知ることができる。実際、こうした質問を投げかけたところ、利用者の大部分が地球温暖化とオゾン層の問題を混同していることが分かり、この2つが異なった問題であることを十分に説明するような展示プランにしたとの報告がある(註8)。 このように利用者の知識を調べることによって、適切な解説のレベルや方法を設定することができるわけだが、展示の企画段階で収集する情報として、利用者の知識と同様に重要なのが、利用者の感情である。展示のトピックによっては、利用者に嫌悪感を抱かせる可能性もあり、それが展示利用の妨げになることもあるが、展示企画の初期の段階で利用者の展示に対する感情を調査することで、展示の際にどのような配慮をしたらよいのかを明らかにすることができる。例えば、展示で奴隷制を扱うことについて、アフリカ系アメリカ人は、そして、アングロ系アメリカ人はどう感じるか、奴隷制と自分の生活に何かしらの関連を見出しているかなどを調査した事例がある(註9) 。また、利用者の感情に関する調査は、利用者の嫌悪感を防ぐためだけではなく、展示内容と利用者との接点をつくるために積極的に利用される。例えば、過去に起こった侵略に関する展示企画に際して、利用者に対して「自分だったら侵略者にどのようにたちむかうか?」「侵略されたときに一番失いたくないものは何か?」などを尋ねたFront-end evaluationの例がある(註10)。過去に起こった出来事について、現代人の関心を喚起することはなかなか難しいが、同じような状況に自分が置かれたらどのように感じるか、という感情面に着目し、それを展示で強調することによって、利用者の心に訴えようとしたのである。 このように、Front-end evaluationでは、利用者のインタビューが主な調査手段である。インタビューは個別に行う場合も多いが、フォーカスグループによる集団面接を行うこともある。フォーカスグループとは、ある共通項をもつ人々を集めたグループ(たいてい10名前後)で、グループに対して質問をして、ディスカッションをしてもらうのを調査員が観察することによって調査をする。ある特定の人々の考え方などを知りたい場合に用いられる。先の例でいえば、アフリカ系アメリカ人だけのグループをつくって奴隷制という展示トピックに対する考え方を話し合ってもらうなどである。子どものグループ、学校の先生のグループなど、展示の内容や想定される利用者層によって、どのようなフォーカスグループをつくるかを決めればよい。 また、改めて評価のためのグループを組織しなくとも、普段の博物館の活動から利用者の興味、関心を探ることも可能である。博物館が主催するイベントやプログラム、または、展示室へいって、利用者の会話に耳を傾けたり、話しをしたりするのも、利用者の考えていること、疑問に思っていることなどを知るよい機会である。展示を開発する者は、常日頃から利用者と接するように努めるべきであろう。 |
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