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■日本における展示評価

 これまで、アメリカの状況を中心に展示評価の概要を述べてきたが、日本の状況はどうであろうか。アンケートを設置して博物館や展示に関する意見を聴取することは多くの館で実施されているし、建築などの空間設計への関心から、博物館における動線調査や観覧行動の観察を行った研究もあり、利用者の立場から、博物館という場所をとらえる努力がみられるのは確かである。しかし、具体的な展示開発の過程に評価を組み込んだ例はまだ少ない。ただし、開館後数年を経た多くの館が、今後の博物館や展示のあり方を模索したり、展示リニューアルを考えたりする中で、利用者の声に耳を傾け、博物館からの一方通 行でない、双方向のコミュニケーションをめざす動きはある。そうした中で展示評価への関心も高まっており、2000年2月には、滋賀県立琵琶湖博物館でアメリカから講師を招いて展示評価に関するワークショップとシンポジウムも開催されている。以下、日本での展示評価に関する事例を2例紹介する。

1. 江戸東京博物館の場合

 平成4年に開館した江戸東京博物館は、東京都が設置し、東京都歴史文化財団が運営する公設民営の博物館である。開館から5年目を迎えた平成9年度以降、継続的に利用者調査、展示評価に取り組んでいる。利用者調査、展示評価を行うきっかけとなったのは、開館から5年目を迎え、10年、15年先を目指して常設展示をどのようにリニューアルすべきかを考えたからだという。そのためには、常設展示がだれに、どのように利用されているのか、現状を把握することから課題を見つけていこうと考えたのである。そのために、まずは常設展示についての調査が行われることになった。なお、調査の実務は、博物館のことを理解し、調査の実績もある民間の会社に委託した。(註13)  最初の2年間で行った調査の内容は以下の通りである。

□利用者調査
誰が、何を目的に、誰と博物館を訪れているのか、何度目の来館か、など、利用者の実態を調査。

□展示ニーズ調査
各展示コーナーにどの程度満足しているか、どんな要望をもっているかなど、利用者のニーズを個人、団体、高齢者・障害者、外国人の別 に調査。

□動線調査・注目率調査
広い常設展示室内を人々がどのように利用しているか、各展示の注目度はどうかなど、利用者の行動を調査。

□館内スタッフの聞き取り調査
警備員や案内係、ボランティアなど、日常的に利用者と接する館内スタッフに対する、利用者の実態、改善案についての聞き取り。

□専門家による批評
展示の専門家および歴史系博物館の学芸員への聞き取り調査。

 これらの調査は、先にあげたアメリカの展示評価の種類に照らしてみれば、Summative evaluationと利用者調査をあわせたものといえるだろう。調査の結果、思った以上にリピーターが多いことや、特定の展示ゾーンが利用されていないこと、意図したルートとは逆に回る人がいることなどに気づいたという。また、暗い、疲れる、迷いやすいなど、展示の内容以前の快適条件に対する要望が多いことも分かり、利用者の居心地のよい環境を整えることの重要性を改めて認識したという。これら調査の結果 は、その後、常設展示リニューアルのマスタープランへと反映された他、リニューアルを待たずとも短期的に改善できることについては、随時改善がすすめられている。
 こうした調査の意義は、職員が共通の基盤に立って議論できるようになってきたことだと博物館は述べている。来館者にとって展示がどう受けとめられているのか、それまでは、各職員がそれぞれの思い込みで、ものを申す場面 もあり、お互いに噛み合わないこともあったというが、調査によって実態が明らかになったことで、同じ認識で利用者に向いあうことができるようになったという。今後、江戸東京博物館では、常設展示のリニューアルに向け、マスタープランを具体的な展示案へと煮詰めていく作業に入る。利用者の声を取り入れながらすすめていく方針で、その過程でFront-end evaluationやFormative evaluationを行っていく予定である。平成11年度には平成12年度から実施する展示評価の計画をたてるために、海外の展示評価や展示開発の事例などの情報収集を行った。


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