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■展示評価をはじめるにあたって

 前述のように、日本でも展示評価を組み込んだ展示開発の試みられるようになってきている。しかし、展示評価を行いながら展示開発をすすめたいと思っても、予算や時間、人材の関係でなかなか実施に踏み込めない現状があるのも事実であろう。その事情はアメリカの博物館でも同様で、展示評価を始めるには何かと障害がある。Kathaleen McLeanは、さまざまな障害があるのを認めた上で、展示評価をはじめるにあたってのガイドラインとして、次の8ヶ条を挙げている(註14)

1. 小さいところから始めよう
 まずは、できることから始めるとよい。展示のトピックについて利用者は何を知っているのか、解説文は理解できるかどうかなど、Front-endやFormative evaluationから始めるとよい。

2. 簡潔に
 評価は、資金を投じた複雑なものである必要はない。解説文を書いてみたら、試しに10人の人に読んでもらうとよい。こうした非公式な簡潔なやり方でも、有益な情報を提供してくれるものである。このようなFront-endやFormative evaluationならば、展示開発の過程に組み込むことは、それほど難しいことではない。

3. 自分が何を知りたいのかを明確にしよう
 どんなに小規模な展示であっても、すべての要素を評価することは無理である。評価によって何を知りたいのか、展示開発チームの問題意識を明確にすることが大切である。

4. 専門家の助けを得よう
 予算に余裕があれば、評価の専門家を雇うとよい。調査を行うコンサルタントは非常に多いが、博物館での評価や利用者研究に精通 した専門家を雇うことが重要である。どのようにしてデータを集めたらよいか、利用者に対してどのような質問をしたらよいかなど、評価を行う際に最も難しい部分について専門家の協力を得ることが、後に有益な情報を得ることにつながる。専門家をフルに雇う余裕がなければ、館の職員の研修をしてもらい、館内職員で評価を実施するのもよいだろう。

5. 忍耐が肝心、しかし、待っていてもはじまらない
 評価によって得られる情報は、目の前の展示を改善するのに有益であると同時に、時間を経るにつれて、利用者の展示利用に関するより大きな見方も提示してくれる。Summative evaluationをしようと思えば、調査の計画、実施、データの分析、そして、それをどう活かすかの決定まで、多くの時間を要する。あきらめずにじっくりと取り組むことが必要だ。評価をしても、展示の修正の予算がなかったら、それは翌年の予算にまわせばよい。ただ、3年計画の調査が実施できるまでじっと待っているようではいけない。それよりも、今すぐ展示室に行って、利用者を観察し、会話に耳を傾けよう。そこから多くのことを学ぶはずである。

6. 同僚の理解を求めよう
 評価は一人では始められない。もし、同僚が評価に対して理解を示さない場合は、利用者を非公式にインタビューして、その結果 を示してみよう。もしくは、同僚を展示室に連れていってみよう。展示室の人々の反応をみれば、評価がどれほどおもしろく、値打ちのあることかが分かるはずである。

7. リラックスしよう
 評価はもちろん綿密な計画のもと実施しなければならないが、それに圧倒される必要はない。評価の最終目的は、自分たちがどれほどのことができているかを確認し、より利用者について知ることである。評価とは、人間が人間を扱うものであり、しかも、博物館という余暇利用の環境で行うものなのだから、リラックスして実施しよう。

7. そして、とにかくやってみよう
 評価には、常識的な判断力と、やりぬく力、そしてよいものをつくりたいとの思いが必要である。限られた資金、人材の中で、しっかりと目標を定めて行うことが重要である。博物館全体が評価の過程を支援することで、博物館の質の向上と、利用者とのよりよい関係が保証されるのだ。

 Kathaleen McLeanは、展示評価は綿密な計画のもとにシステマティックに情報を収集するものであるとしながらも、利用者について知るためには、まずはできるところから始めることを、そして、それが必ず展示開発に有益なものになるであろうことを強調している。前述した松戸市立博物館の例は、予算も人員も限られた中で、当館の試みを支援しようという外部の協力を得ながら、とにかく実験的に動きだしたもので、このガイドラインの実践版ともいえるだろう。


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