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インタビュー:
津田雅人 |
| 自然の言語を人間語に翻訳し交渉するのが研究者の役割 |
――まずはじめに、湊さんと、この「ヤマネミュージアム」の基本的な考え方からお話ください。
湊――ここは見てお解りのように、ミュージアムというより「ヤマネハウス」というような小さなものです。展示の方もお金が少ないからさっぱりとしています。ちょうど森の中にドングリが落ちてきて、ちょっぴり芽を出したミュージアムというところです。小さい物しかありませんが、でも、すぐそばに森があり、ヤマネ(注1)がいる。フィールドミュージアムです。もうひとつあるのは、ヒューマンネットワークです。いろいろな方が関わってくれています。ほんとに手作りというか、みんなの暖かな思いでぼちぼちとやっています。 ヤマネというのはとても小さな動物で、遺伝的な研究で数千万年前からいたことがわかった「生きている化石」なのです。そして、冬眠するという不思議な動物です。体温が0度くらいまで下がって六ヶ月間何も食べない、そういう不思議な生き物です。 そういう小さくて不思議な生き物をとおして人々にいろんなことを伝えられたらいいな、と。たとえば小さい頃、指で障子を破ってのぞくと向こうの広い世界が見えましたね、それと同じようにヤマネという小さな動物を通して森をのぞくと、広い森が見える。人々や社会、そして、地球が見える。そのように研究を社会のために応用というか役立てたいですね。 ここはスタッフは僕ひとりで、研究の方をやっていてお店番はしないんです。ぼくは、向こうの研究室にいるか、だいたいは森に行ってます。調査の手伝いに来てくれるボランティアの皆さんには、ここは朝から朝まで活動するコンビニ活動ですよ(笑)と伝えます。僕は昼間は森にいて夜も森で観察をする、つまり、朝から朝までになります。 ここの活動には五つのステップ、柱があります。一つ目はヤマネを総合的に研究をしたい。ここでは生態学と行動学の研究を行います。そして、僕の共同研究者には、冬眠の生理を調べる方、遺伝学の方、栄養分析をしている方とかいろんな分野の方がいます。そういうように多面多層的に調べてヤマネの生物学を調べます。 二つ目は、ヤマネを保護するための具体策を提案することです。その近くにある例が「ヤマネブリッジ」です。道路公社が有料道路を造るのに森の中に道路工事を行いました。その結果、小さな森が周囲の森から孤立化してしまったんですね。それで孤立化したヤマネたちを保護するためにヤマネブリッジというのを提案しました。 そこで最初に提案しましたのは、幅が9メーターの横断陸橋です。土を置き、ヤマネが餌とする木、巣材とする木などを植え、ツル性植物で移動できるようにします。幅を九メーターとすればタヌキ、シカなども通れるではないかと考えました。でも、それは余りにも予算がかかるとのことでした。それで、できたのが道路標識型のヤマネブリッジです。 さまざまな工夫を凝らしました。周囲を金網で囲んで天敵の攻撃を防ぎました。中には蔓を置いて、移動できるようにしました。床部には板をしきつめて、夜、車のライトができるだけあたらないようにしました。隠れ場所として巣箱を配置しました。ブリッジの両側にはヤマネの餌や巣材となる木を道路公社は300本植えました。森からブリッジへのアクセスとして枝をかかりつけました。そして、それが今の姿としてできたのが1998年6月です。 それから一ヶ月後ヤマネが巣をつくったんです。僕は疑り深いほうですから、たった一ヶ月でこんなにもヤマネが来るものだろうかと。でも、巣材の特徴もヤマネのもので、巣の中からはヤマネの毛が出ました。別の巣箱にはヤマネのフンがある。これはやはりヤマネだと確認しました。 それ以降、去年も今年も共通して使ってくれているのがシジュウカラです。シジュウカラは今年は三回も抱卵しました、ヒメネズミという小さなネズミも出産、育児しました。今年はヤマネをブリッジの中の巣箱で二回見ました。それも、マーキングしていますから同じ個体だとわかりました。また来たのか、と(笑)。 ヤマネたちが巣箱で休んで、鳥たちが一生懸命に雛を育てている、その真下を道路が通って車が行き交っているわけです。今「自然との共生」がよくいわれていますが、共生という言葉はきれいなのですが具体的な内容が漠としている。私は具体策を提示したいと思う。 僕は、共生というのはある面で我慢のし合いっこだと思います。こんなことを言うとしかられるかもしれませんが。ちょうど狭い一軒の家に舅さんとお嫁さんがいるとすると、平和に暮らそうと思ったらどちらも我慢をするということが大事ですね(笑)。 ですから、小さな地球の上でこれまでは人間がまるっきり身勝手に自然を壊してしまってきた。そして、自然側の声というか論理というか、そのへんが人間側に届かなかった。だから研究者というのは、自然の言葉を人間語にトランスレイトして伝えていく。交渉していく。そういうのが研究者の役割だと思うんです。 森の動物にとっては本当は道路がない方がいいですよね。でも人間にも道路が必要だ。じゃあどうすればいいのかということを考えるんです。これが第二ですね。 |
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