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| ■博物館にとって利用者とは |
| 公共、民間を問わず、博物館・美術館の数は1970年代以降増加の一途をたどっており、現在も次々に新しい博物館が誕生している。個人の家を博物館として開放したものから公共事業として多額の税金を投じてつくられたものまで、博物館と一口にいってもその規模や中身は実に様々である。日本博物館協会によると、動植物園、水族館を含む博物館の数は平成12年3月現在で3,691館だという(日本博物館協会,2000)。 はたして、それらの博物館はどれくらいの人に利用されているのだろうか。日本博物館協会が平成9年度に行った調査によると、1875館中約半数にあたる967館が過去1〜2年の間に入館者数が減少していると答えている。平成4年に行った同様の調査では、減少傾向にあると答えた館は全体の22.7%だったので、総じてここ数年の間に博物館の入館者数は減少傾向にあるといえる(日本博物館協会1999)。(註1) コールトンによれば、博物館にもライフサイクルがあり、成長期、成熟期、衰退期を迎えるという。開館後、2〜3年目までは宣伝効果も手伝って、入場者数は上昇するが、4年目に5年間の平均利用者数となり、その後、追加投資を行わないと利用者数は減少し衰退期に入ると分析する(コールトン2000年)。成熟ていくには、いくつかの局面で刷新をはかり、常に鮮度を保っておく必要がある。 しかしながら、そういった自助努力をせずに利用されようとされまいと構わず、現状維持することにとどまっている博物館も多いのではないだろうか。学校では児童が大幅に減ると統廃合が行われる。お店も客が来なければ店をたたむ。交通機関も利用者がいなければ廃線という選択を迫られる。それに対して博物館、特に国や公立の博物館は、一度つくってしまえば利用者がいてもいなくてもそこにずっと存在し続けることができる。(少なくともこれまでは存在し続けることができた。)もちろん、博物館は入場料収入に多くを頼った経営をしている集客施設とは役割も性格も異なるので、単純に利用者がいないという理由で閉鎖することはできない。博物館には、資料の保存、保管や調査研究と割があり、それがテーマパークやアミューズメント施設などの集客施設との大きな違いでもある。しかしながら、それらの役割を果たしていれば、広く人々に利用されなくてもいいのかというとそうではない。博物館はそこに建っているということで目的を達成したかのように見られるところがあり、今どのように使われているかということは、必ずしも重要とされてこなかった。存続するという最低限の権利は守られているので、それで満足してしまえば、利用者を特に意識しなくてもよかったのである。施設を建設するためのイニシャルコストには巨額の予算がついても、開館後のランニングコストは乏しいというのが多くの博物館の現状である。 博物館の数から見た華やかさと裏腹に、こういった使われない博物館がこのまま放置しておくと、ますます増えていくことにもなりかねない。昨今の厳しい財政状況のなかで、博物館をはじめとする文化施設への風当たりはますます強くなってきている。博物館にも経営という視点が重要であるといわれて久しいが、人材開発と確保という点では、まだ旧態依然のままのところが多いといわざるを得ない。そのようななか、東京都写真美術館と東京都現代美術館の館長への民間人の起用は、日本の博物館に新しい風を吹き込むことになりそうだ。また、国立美術館・博物館も独立行政法人化されることによって、博物館における経営の役割が一層重要になることが予想される。 博物館は利用されてこそ存在価値が高まる。利用者を増やすことは、おそらくどの博物館も直面している、そしてこれからも直面し続ける大きな課題であろう。経営基盤の確保という理由以上に、博物館にとってより多くの利用者を確保することは、自らの存在意義を証明するという意味において重要だといえる。ィーを示す一つの基準となる。博物館が「市民」からもらった税金をどれだけ還元しているか、どれだけ地域に貢献しているかということが問われる。民間の博物館の場合は、税金の還元という図式ではないが、社会教育施設、あるいは文化施設として、知的サービスを提供し、地域の文化振興に貢献するという社会的使命を担う点では公立博物館と同じである。 どの博物館にも共通の最も基本的な課題が利用者を増やすことであろう。本論では、単に利用者の量的増加ではなく、質的増加、つまり博物館がどのように利用者の体験の質を高めていくことができるか、そしてそれがどう社会に貢献し得るかという視点に立って、博物館利用者の開拓の方法を考えてみたいと思う。 |
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