評価と検証をとり入れた展示開発‐自然共生研究センターにおけるケース・スタディー‐
〜『文環研レポート』18号より〜
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4.おわりに

 完成版の研究解説パネルが実験河川に設置された後、以前の調査に協力してもらった14名の人々に、再びパネルを見てもらい感想等ヒアリングした。
 「パネルはわかりやすくなったか」という問いに対して、13名が「わかりやすくなった」、1名が「かわらない」と回答している。わかりやすくなった理由としては、文章では箇条書きにしたことで「まとまりがある」、「簡潔になった」などの印象があがり、わかりにくいと指摘があった図やグラフについても、「理解しやすくなった」「シンプルになった」なったなど、改善したポイントについて利用者側からも認識を示すコメントが抽出できた。
 確かに利用者にとってのわかりやすさは向上した。しかしながら現場で研究に携わり、研究成果を提供するセンターの研究員の視点でみると、改めて検討すべき点がいくつか残されている。レポートの最後にその点を整理し、今後課題としたい。

■研究成果を一般向けに提示する難しさ

 センターが扱う研究では、環境条件によって全く異なる傾向を示す結果がある。そのような説明には前置きが長くなり、説明自体も冗長気味になる。また専門的な用語を使わざるを得ない時にも、用語自体を説明する必要が生じるなど、研究者が望ましいと考える一般に向けた説明はどうしても長くなってしまいがちである。
 しかし、それが利用者の理解の妨げになっているのも、紛れもない事実である。例えば、あるパネルで研究成果の傾向について正確に伝えようと、複数のグラフを用いたり、一つのグラフでもデータのばらつきを示す標準偏差を示したものを使用したところ、利用者からそのグラフに対し「理解しにくい」とのコメントがあがった。また専門用語をわかりやすくシンプルなものに変更したところ、今度は利用者と想定している河川生態系の研究者の一部から「もう少し、詳しく解説して欲しい」などのコメントが表出した。
 このように研究者の考えを利用者に理解してもらうため、表現上どこまで利用者側に歩み寄れば良いのか、そのバランスをとるのが非常に難しいことを実感した。

■扱えない情報をいかに他の方法で提供するか

 ひとつのメディアの中で、求められる情報を全て扱い、あらゆる要望を満たすことは困難である。その場合、情報を発信する側はどのように対処していくのか、先に述べた「研究者の考えを利用者に理解してもらうのための表現」の検討とあわせ、より活発な内部議論を行う必要がある。
 今回設置した研究解説パネルで載せきれなかった情報は、ホームページや印刷物など他のメディアを利用するようパネルに記載することで、より多くの情報が必要な人への対応とした。
 またパネルの開発とあわせ、実験河川をどのように見学したらよいか提案する「ガイドマップ」も作成した。ガイドマップは、生物に関する内容でコースを設定したもの、川づくりにポイントを絞ったものなど計三種類作成した。マップは見学者を研究解説パネルを設置した現場まで誘導するもので、センターのスタッフが見学者に付き添って施設や研究について現場で説明できない時に主として活用されている。
 今後は人を介した説明など、見学者よって異なる個々のニーズをどのようにくみ上げ対応していくか、より研究者が積極的に参加する体制で検討していきたい。


参考文献

(1)建設省河川局(1997)新しい河川制度の構築.(社)日本河川協会
(2)琵琶湖博物館・琵琶湖博物館ネットワーク協議会(布谷知夫、芦谷美奈子)編(2000).ワークショップ&シンポジウム・博物館を評価する視点.琵琶湖博物館研究調査報告第17号.滋賀県立琵琶湖博物館
(3)東京都江戸東京博物館(2001)博物館における評価と改善・スキルアップ講座・資料集.東京都江戸東京博物館
(4)自然共生研究センター(2000)自然共生研究センター活動レポート平成12年度の成果から.独立行政法人土木研究所自然共生研究センター
(5)Bradley G. A.(1982)The Interpretive Plan. Interpreting the Environment (2nd. ed.), Grant W. Sharpe (ed.). Wiley. New York.
(6)環境庁自然保護局(2000)自然学習歩道の計画マニュアル.環境庁
(7)Caulton T著.染川香澄、芦谷美奈子、井島真知、竹内有里、徳永善昭訳(2000)ハンズ・ オンとこれからの博物館.東海大学出版会


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