生涯学習時代に苦学を強いられる博物館−博物館のリストラに備えよう−
〜『文環研レポート』19号より〜
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■市民の自治精神が地域の文化

 一方、これらの資料が市民の学習ニーズに応えうるには、観覧や縦覧を想定した展示機能とともに、レファレンス機能を重視した態勢、つまり個人の個別な学習要求に応えられる閲覧、調査機能も重視されるべきだと思われる。真にモノを通して「学習」するには、ガラスケース越しにモノを眺め、観察するだけでは不十分であり、必要とする資料が展示されていない場合でも、図書館での図書等の利用と同じように公開展示資料(開架)と収蔵資料(閉架)をともに利用できる態勢、つまり、公開展示資料と同時に、収蔵資料もまた、実見でき、実地に調査できることで、市民個々の学習ニーズに対応できるよう配慮すべきである。これら一連の作業、活動は、すべて地域の人々の自主的な参画のもとで支えられることが、行政の推進する「文化リストラ」への防衛策、次善策として求められる。町内会が集める会費の中にこそ、地域の文化事業や活動を主導、育成していく「学び」支援のNPO団体等への活動募金があってもいいのではないか。(注11)文化活動の担い手が、行政から市民にとって代わることで、かえって地域の文化に温かい血が通い、自由ではつらつとした熱い気脈が地域全体に浸潤し、それが固有の土地柄となって根を張り、独特の気風と愛着が訪れる人々をもてなして魅了する。市民が身近の文化資源を協力して保存、伝承し、それをコミュニティの共有資産として、ともに学び慈しみ、価値を認め合い、さらに自らも高めていこうとする行為と姿勢こそ、成熟した市民社会が目指す「生涯学習時代」への道筋に他ならない。

 また、そのような成熟した市民社会が博物館のリストラをくい止める大きな力となる事に本来期待すべきかも知れない。博物館活動への市民参加がスローだが着実に進んでいる昨今の状況に、明るい兆しも感じられる。ただ、足元の文化資源を検証、保存し、それらを未来の資産として継承、発展させていくという地域経営の理念とその実現への意欲が、地域のコミュニティとそれを構成する市民の自治精神に基づくものである、という認識が地域社会に育っていかない限り、今後も市民は博物館をリストラされる側に居つづけることになるであろう。


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