博物館の自己点検 −ドイツとフランスにおける評価の動向から−
Evaluation,a way of knowing one's museum:
Approaches in Germany and France. ナタリー・ノイマン  Nathalie Neumann 川嶋-ベルトラン 敦子 Atsuko Kawashima-Bertrand
ナタリー・ノイマン/川嶋-ベルトラン 敦子プロフィール
〜『文環研レポート』18号より〜
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■はじめに

 今日、博物館は、変化、激動の渦中にある。ただ単にモノを集めるという行為だけではなく、施設経営力が要求され、一般市民との関係の舵取りについても怠ることは許されない。博物館という施設は、社会の中の開かれた一共同体として捉えられるべきものである。社会環境と別個に存在するものではなく、人的、経済的にも、また情報化という点においても、社会とともに変容する(べき)存在である。

 博物館は今まで経済的な問題に対して、ある意味では無関係を装うことができていた。だが今日我々が直面している経済問題は深刻であり、人々のシビアな眼差しが博物館に対しても向けられている。施設としての経営効率、ひいては博物館が社会に与え得る影響力について、その価値が再度問い直されていると言っても過言ではない。

 このような社会情勢から、「評価」というものが、世界の博物館のさまざまな場で問題とされるようになり、これについては日本の博物館も何ら例外ではない。本稿はこのような時勢を考慮し、博物館と評価の問題について、国外の動向を伝えることに主眼をおき執筆した。

 周知のように博物館評価は、アメリカとイギリスという英語圏で熱心に実践されており、その動向については日本でも紹介されている。しかし博物館評価という課題は必ずしも英語圏諸国に固有のものではない。このことを踏まえ筆者(川嶋)は他国の事情を俯瞰できる機会がないものかどうかと考えていた。幸いにもこのたび、ドイツとフランスの博物館事情に詳しく、しかも独、英、仏の三ヶ国語を自由に使い分けるN・ノイマンと意見が合い、本稿を執筆することになった。

 今回の国外の動向に関する調査は次のように行った。まず川嶋が把握している英語圏における博物館評価事情に関する情報をN・ノイマンと共有した。来館者研究や博物館評価の経緯や現況の分かる文献を示したほか、英語圏の場合、インターネット上で多くの実績が公表されているのでこれを参照してもらった。

 次に、この英語圏の資料に対し、ドイツとフランスにおいても同等のものを見出せるのか、あるいは別の動向を見出せるのか、N・ノイマンにWeb上で検索してもらい状況を包括してもらった。

 そして最後に幾つかの施設へ問い合わせたほか、雑誌・書籍等を検討し、ドイツとフランスという二国の「評価」に関する取り組みについて、報告文として川嶋がまとめ直した。


■本報告の短所について

 本報告は、日本に在住する筆者らが、ドイツとフランスの博物館評価事情について、インターネットを用い調べた結果をもとに執筆した。ドイツ、フランスにおける筆者らの居住歴は長いが、現在は二人とも日本に住んでいるため、情報を入手するには地理的ハンディキャップを負っていた。ドイツやフランスの施設へ問い合わせたり、雑誌・書籍を検討したものもあったが、我々の調査の大半は、Web上で公表されている文書を検索した結果である。

 これらの作業を通し、独仏の場合、英語圏に比較してWeb上での情報公開が遅れていると筆者らは理解したが、併せて次のような疑問も感じた。Web上に評価結果が公表されていないのは、博物館評価そのものが遅れているためなのか、あるいは博物館評価は行われているが、Web上で情報を公開する必要性が認識されていないため公開されていないのか、筆者らには正確な判断ができなかった。読者の方々にはこの点を念頭に置き、以下を読み進めて頂きたいと思う。

 またこの不況下では、国の経済情勢が、博物館経営に大きな影を落としていることも否めない。本来ならば、各国の経済情勢を俯瞰したうえで、博物館固有の問題を捉えていくのが筋であろうが、これは筆者らの手にあまることでもあった。本稿をもとに、新たな調査が進められることを願う次第である。


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