博物館の自己点検 −ドイツとフランスにおける評価の動向から−
〜『文環研レポート』18号より〜
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■構造的差異:博物館を規制する法

3.1 ドイツにおける博物館

 ドイツは16のLaender(あるいは州)から成る連邦国である。各州には独自の文化省があり、博物館の頭上に君臨しているわけである。ドイツ連邦国の文化省、教育省は存在せず、国レベルで博物館を管轄する組織は存在しない。このことは文化や教育の領域にかんするマネージメントがさまざまなかたちで存在することを意味する。つまり博物館に関する法規定は、連邦国の法レベルで規定されていないのだ。博物館法と運営については、Laenderによってまちまちなのである。この個別で雑多な状況に何らかの枠組をあたえるようなものは稀であり、あったとしても国レベルのものではない。

 ベルリンの博物館財団下にある一組織としてInstitut fuer Museumskunde(IfM)がある。これはドイツの博物館に関する資料と研究を集中化させるための博物館学の研究所と言えるもので、中立・客観的な姿勢を保ちながら、ドイツの博物館を把握する任務を負っている。なお前述のことから分かるように、ドイツの場合、博物館を国全体で統括する法がない。そこでこのIfMの定める博物館についての定義が用いられることがある。ここで言う博物館とは、コレクションをもち、一般的な文化、歴史、科学という目的のためにモノを展示し、公的で営利を目的としないものと定義されている。

 だがこの定義では、どのような博物館が存在するかどうかということを、いわゆる経験的なかたちで分類し把握することは可能だが、博物館のもつ使命と機能からその在り方を規定することはできない。結局、各Laenderが博物館連合や博物館局といったものを決定し、これらが博物館とは何かを決めることになる。

 いずれにせよドイツの場合、ICOM(注5)によって決められた博物館についての定義が一般に通用するようになっている。またドイツの博物館についての実態把握は、来館者数や入館料といった単なる数値データが計上されているに過ぎず、来館者の社会的属性までは把握されていない。またIfMの調査は執行強制力をもたないので、博物館経営者側の意識の高低に応じて、回答率が左右されることになる。例えば2000年には、88.9%の回答率であった。(注6)

 現在、IfMによると、連邦レベルで評価を導入しその評価手法を公開するプロジェクトが進行中であるとWeb上に記されている。だが、インターネット上で進行状況を把握することには限界があり、具体的な評価手法については把握できなかった。このことを鑑みるならば、現況としては、評価が実践されているのは地方レベルであると言える。またそのあり方も継続的ではなく、例えばある展覧会の準備、成果測定といった一時的な必要性から実践されているのが実情のようである。


(図2)

3.2 フランスの博物館

 フランスにおける博物館については、この国の中央集権的な統治のあり方がそのまま形として表れている。国の文化省が新たな法律を決め、各地方レベルでもそれが凡そ適用されている。なお2002年に公布された新たな法律があり、これは「フランス博物館」(認定博物館)とは何かを定義するものであり、1945年以来変わることのなかった行政的枠組みを一新するものであった。

 1974年のICOMの定義を適用し、「フランス博物館」は、文化、科学的性質をもったモノ、コレクションを保存し、研究、教育、リクレーションという目的のもとに展示する恒常的な組織であるとしている。(注7)この定義からは、フランスの博物館が物質的側面に関心をはらっているとは言えない。経営面では営利を目的とした法人に委ねることも可能であり、これはブティックや書籍などの商業的活動を目的とした組織であるフランス博物館連合がこれに該当していると言える。(注8)

 ところで、この法が決議される以前には、どのような討論があったのだろうか。法案であったものと、公布された法律とを見比べてみると、それには実に興味深い思考錯誤の段階があったことが分かってくる。
http://www.assemblee-nat.fr/dossiers/musees_de_france.asp

 実はこの法律の中に盛り込もうとしていたものは、博物館経営に大きく関与するものがあった。例えば、カジノ事業で得た収益を博物館の作品購入のための財源としてあてることが法案の段階では書かれていた。また文化財保存学芸員の転勤を円滑にするような案も出されていた。博物館の入館料を一律に規定する施策についても案が出されていた。(注9)

 さらに法案第6条第2節において、フランス博物館全体が「来館者についての統計的データと情報」を国の機関に報告しなければならないことが盛り込まれていた。つまり、利用者のプロフィールを把握したデータを報告をすることを義務化しようとする案が出されていたのである。


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