博物館の自己点検 −ドイツとフランスにおける評価の動向から−
〜『文環研レポート』18号より〜
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4.2 フランスの博物館における評価の試み

恒常的一般利用者調査(OPP)

 一般市民の博物館利用状況を恒常的なかたちで調査するという企画が、1991年、フランス博物館総局によって打ち出された。博物館を訪れた一般市民を対象に調査を実施するもので、開館期間中のすべての日において、5人に1人、または10人に1人、15人に1人というように入り口で質問票を手渡す(つまりランダム抽出で回答者を決める)ものである。学校による団体利用と外国語で対応できない者を除き、すべての利用者が調査対象となる。質問票は6つの大きな観点に基づき構成されており、次のことが分かるように設計されている。
1)(なぜ来たのかといったような、)施設に足を運ぶまでの経緯、2)来館した結果、施設のどこに魅力を感じたか、3)期待していたことに対しての満足度、4)再来館意向、5)社会的属性、6)地理的属性の6点である。(図4・図5)

図4_1図4_2
図4

図5_1図5_2
図5_3図5_4
(図5)

国主導のこの調査には、100館以上の施設が参加している。その結果この調査は、博物館施設を運営する国や自治体にとって、大変有益な情報をもたらすものとなっている。入館料について討議するための情報源として活用するだけでなく、利用者のニーズに対して文化政策上の意思決定をするための基本的情報源として活用されている。ルーヴルやその他の美術系の施設、またパリのユダヤ史博物館などは、あらたに評価に関する専門部門を設置するほどである。 (注11)

 OPPは正確な情報を提供してくれる。それは1991年から1996年の間に要請を受け、この調査をもとにイギリスの博物館に次のような助言を行ったことからも明らかである。今まで博物館というのは、入館者を増やすことだけがあたかも到達すべき目標かのように行動指針を立ててきた。だがこのOPPを導入することによって、博物館は市民の求めている多様なニーズにこたえるための施策を検討するように変容したと言うのである。(注12)

 また、以前は入場者数を増やすことに直結する企画・特別展ばかりに博物館関係者の関心が向いていた。だがこの調査を導入してからは、一般市民との恒常的な関係を構築する上で、常設展入場者についての実態把握と施策を考えていくことが重要であると再認識されるようになったと言う。

ルーヴル美術館における調査

 ルーヴル美術館は長期間にわたって観客調査をしている。4万人にたいして調査票が配布されており、一般観客について収集したデータとしては、そのスケールの大きさからかなり稀有なケースであるとも言える。この一連の調査結果から、利用者についての動向を測ることができるだけでなく、顧客についてのかなり詳細な分析が可能となった。

 だがその一方、Claude Forteau (注13)によると、調査が実践され数字がはじき出されることによって、かなり両義的な側面も見え隠れするようになってきたという。はじき出された数字が、発言力をもってきたのだが、一体これによって我々は何をしようとするのかという疑問である。博物館の利用者についての明晰・客観的な評価に役立ち、ひいてはある文化の在り方について研究する社会学的アプローチにまで役立つものなのか。あるいは、単にある博物館の中で起っている現象の一部分を数字に置き換えるだけの行為で我々は善しとするのか。数字をはじき出すことの役割は何なのかというある意味では根源的な問題に言及している。


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