動物園における人と生きもののかかわりを伝える教育プログラム
〜『文環研レポート』20号より〜
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■タイプの異なる三つの動物園

 Melbourne ZOO、Healesville Sanctuary、Werribee ZOOの三園は、ビクトリア州政府の中にある組織、Zoological parks and garden boardに管轄されている。最高経営責任者の下に、三つの動物園長、マーケティングおよび来園者サービス部門長、保護および調査部門長、営業企画部門長、経営推進部門長、教育部門長から組織されている。以下に3つの動物園について簡単に記しておく。

  1. Melbourne ZOO
     オーストラリアで最も古い動物園であるMelbourne ZOOは、メルボルン中心部に位置する王立公園の敷地の中に、350種以上もの動物を有する都市型動物園である。開園当初(1862年)、イギリスから持ち込まれた動物を狭い檻に陳列していたが、現在では生息環境を再現した広い空間で放されている。観察も動物にストレスがかからないよう、人の気配を極力消した場所で行えるよう試みられている。
  2. Healesville Sanctuary
     飼育動物をオーストラリアの動物に特化させているHealesville Sanctuaryでは、中でも特に南東オーストラリアに生息する鳥類、哺乳類、爬虫類を中心に200種以上、潅木が生い茂る自然空間の中で放飼している。鳥類やカンガルーの飼育ケージでは、人と動物との仕切りがなく、まさしく動物の生息空間に人が分け入るように設えている。
  3. Werribee ZOO
     広大なアフリカの草原を再現しているWerribee ZOOは、日本で言うサファリパークに近い動物園で、主にアフリカの草原地帯に生息する動物が飼育されている。広い敷地の中で、放し飼いにされている動物たちを専用のバスに乗り見学するサファリツアーが人気である。

■Healesville SanctuaryにおけるWild Education

 1プログラム45分で構成されるWild Educationは、25人前後の生徒を1グループとして分け、各動物園に在籍する教育部門のスタッフにより実施される。
扱うテーマや内容、対応する教科などから、多種多様なプログラムが用意されているが、動物の観察や触手など、生きた動物とのふれあいを通し、人がどのようにしたら動物や環境に負荷を与えず付き合えるかを考える「きっかけづくり」が、プログラムすべてに共通する視点である。
 以下、対象となる学年ごとに順を追って、どのようなテーマと内容でプログラムを実施しているか見て行きたい。

  1. 就学前に対応したWild Education

     就学前の子どもに対応するプログラムは下記の通りである。プログラムは専用の小道具と教材を多用し、パズルや人形劇など簡単な活動を通して進められる。
    ●動物と植物のかくれんぼ/生き残るための重要な手段「隠れる」について学ぶ。
    ●夜行性の動物/夜行性動物の持つ特徴や特性について学ぶ。
    ●夜中にドンとぶつかってくるもの/カエル・ヘビ・トカゲ等、オーストラリア固有の動物に触れ合う。
    ●明るい眼と、もじゃもじゃのしっぽ発見キット(環境教育プログラム)/オーストラリアの野生動物と環境についてハンズオンキットを通して学ぶ。
  2. 準備学年〜第二学年に対応したWild Education

    「適応」について学ぶ <以下、( )内は対応する教科>
    ●夜の動物たち/夜行性の動物の持つ特徴や特性について学ぶ。(科学)
    ●生命の循環/有袋類の子ども、両生類など、オーストラリアのさまざまな動物の生態を学ぶ。(科学)
    「種の保存」について学ぶ
    ●動物のお話/物語を通して、絶滅危惧種についての意識を高める。(英語・科学・社会環境)
    ●絶滅危惧種/南西オーストラリアにおける絶滅危惧種について学ぶ。(科学・社会環境)
    「生物多様性」について学ぶ
    ●動物ラッピング/生きた動物を用い、オーストラリアの野生動物の外見的特徴や特性を学ぶ。(科学・社会環境)
    ●羽毛・毛皮・鱗・皮膚/オーストラリアにおける動物の外見的特徴の分類を行い、動物の多様性を学ぶ。(科学・社会環境)
    ●サンクチュアリーのサファリ/サンクチュアリーでの観察を通し、オーストラリアの多様な動物を学ぶ。(科学・社会環境)
    「生息環境」について学ぶ
    ●家と隠れ家/動物にとって休息や子育てに適した場所について、自然や身近な環境から考える。(科学・社会環境)
    ●湿地と水路/湿地帯や川に生息する動物について学ぶ。(科学・社会環境)
    ●野生動物と暮らす/サンクチュアリーでの観察やハンズオン体験を通し、身近な場所で暮らす色々な動物について学ぶ。(科学・社会環境)
    「先住民」について学ぶ
    ●先住民たちの夢/この地区に住んでいた先住民の物語や伝承を通し、自然や動物たちと先住民の関係について学ぶ。(社会環境・英語)
  3. 第三学年と第四学年に対応したWild Education 

    「適応/動物のからだの構造と機能」について学ぶ
    ●動物ラッピング
    ●飛ぶ・滑空・舞い上がる?/風を利用した植物や動物の構造と特徴を学ぶ。(科学・技術)
    ●夜の動物たち
    ●むしゃむしゃ、ぽりぽり/食物連鎖を通したオーストラリアの動植物の関連性を学ぶ。(科学)
    「種の保存」について学ぶ
    ●動物のお話
    ●絶滅の危機にある種
    「生物多様性」について学ぶ
    ●それぞれのグループ/哺乳類の外見的特徴、食性、活動期間、生息地など、観察を通しながら学ぶ。(科学・数学)
    ●サンクチュアリーのサファリ
    「生息環境」について学ぶ
    ●湿地と水路
    ●野生動物と暮らす
    「先住民」について学ぶ
    ●先住民たちの夢
  4. 第五学年と第六学年に対応したWild Education 

    「適応/動物のからだの構造と機能」について学ぶ
    ●飛ぶ・滑空・舞い上がる?
    ●むしゃむしゃ、ぽりぽり
    「生物多様性」について学ぶ
    ●それぞれのグループ
    ●サンクチュアリーのサファリ
    「生息環境」について学ぶ
    ●湿地と水路
    ●野生動物と暮らす
    「先住民」について学ぶ
    ●先住民たちの夢5.第七学年〜第十学年に対応したWild Education
    「適応/動物のからだの構造と機能」について学ぶ
    ●オーストラリアの高級な毛皮/種類の異なる哺乳類の観察を通し、オーストラリアの哺乳類の特性を学ぶ。(科学)
    ●生きるために出来ている/動物が生きるため必要な身体機能について学ぶ。(科学)
    ●飛ぶ・滑空・舞い上がる?
    「種の保存」について学ぶ
    ●そして、何もいなくなった/絶滅の危機に瀕するビクトリア州の動植物について、その理由と環境保全のため出来る事などを学ぶ。(科学・社会環境)
    ●ツアーにて/エコツーリズムの場としてのHealesville Sanctuaryの可能性について、設立目的、施設設備、飼育動物といった視点から学び考察する。(社会環境)
    「生物多様性」について学ぶ
    ●それぞれのグループ
    「生息環境」について学ぶ
    ●湿地と水路
    ●野生動物と暮らす
    ●森のつながり/動植物の共生について、観察やハンズオンから学ぶとともに、どのような人間の行動が、このバランスに影響を与えるか考える。(科学・社会環境)
    「先住民」について学ぶ
    ●先住民たちの夢

グラフ
▲ビクトリア州における初等・中等教育


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