動物園における人と生きもののかかわりを伝える教育プログラム
〜『文環研レポート』20号より〜
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■Wild Educationプログラム 野生動物と暮らす

 Wild Educationは、一体どんな内容で実施されているのであろうか?すべての学年に対応するプログラム「野生動物と暮らす」で、実際に使われているワークシートから読みとってみたい。
 「野生動物と暮らす」は、身近な動物の生息環境についての学びを目的とするプログラムで、サンクチュアリーにおける動物観察とハンズオン体験から進められる。下記は第五学年から第八学年用ワークシートの内容で、身近な七つの項目から構成されている。初めのページには、サンクチュアリーのトレイルマップが挿入されており、園内の探索中に出会ったいろいろな動物について記すよう促している。

  1. 林のなかで
    『オーストラリアの鳥たちは、古い木々にできたおおきな穴を巣や隠れ家としています。』
    ●穴が大きくなるまで、どのくらいの時間がかかったのでしょうか?
    ●どのようにできたのでしょうか?
    『人工的な空間にいる園内の鳥たちは、自然の木々にできた穴にめぐり合うことはありません。Eastern Rosellasを観察してみましょう。』
    ●鳥たちは何を代わりにしていますか?
    『都市における巣箱は、在来種の鳥たちにとって安全な場所を提供するため使われます。しかし外来種の鳥や蜂に使われないようにすることが重要です。』
    ●あなたが知っている外来種の鳥の名前を三種類あげてください。
    『飼育されている鳥は、人の給餌に依存しています。この飼鳥ケージの餌場をさがして、どの鳥が種子を食べ、どの鳥が果実を食べているか観察しましょう。』
    ●くちばしはどのように違いますか?
    『seed bellの多くが、鳥の体に悪い影響を与えるPVA糊で作られています。』
    ●この他、鳥への人工的な給餌が在来種の鳥に悪い影響与える可能性についてあげてみましょう。
    ●都市で在来種の鳥に自然の食料を与えるため、都市で私たちにできることは何でしょう?
    『オウムがくちばしと爪を使ってワイヤーを動かす様子を観察しましょう。オウムはくちばしを使って種や木の実を開けます。また木をかじることでくちばしを研ぎます。都市にすむオウムは電線を止まり木にしたり、くちばしを研いだりします。』
    ●都市におけるオウムの行為は、どのような危険を孕んでいるでしょうか?
    ●オウムが電線などに止まらないようにするにはどうしたらよいでしょうか?
  2. 茂みの鳥たち
    『立ち止まって眺めたり、触ったり、においを嗅いだりしながら、いろいろな植生を観察しよう。』
    ●草地・林・小さな木がはえている場所にそれぞれどのような鳥がいるでしょうか、またその場所で一体何をしているでしょうか?
    ●鳥たちがこれらの場所を好むのはなぜでしょう?
    『このまま歩いていくと左手にとげのあるPrickly Currant Bushと Soft Tea Treeが見えてきます。Prickly Currant Bushを触ってください、どんな感じがしますか? Soft Tea Treeの葉を少しとり、つぶしてください、どんな匂いがしますか?』
    ●小さな鳥にとってPrickly Currant Bushはどんな役割があると思いますか?
    ●小さな鳥たちにとってSoft Tea Treeはどんな役割があると思いますか?
  3. カエルの沼地 
    『オーストラリアの多くのカエルたちは、生息環境の変化によって絶滅の危機に瀕しています。』
    ●あなたの家や地域、学校などで、カエルの生息地を増やすためにできることは何でしょうか?
    『カエルの生息地である沼地を観察してみましょう。』
    ●カエルは捕食者や太陽光から身を隠すため、どのようなものを使っていますか?
    ●カエルは何を食べているでしょうか?
    ●カエルが餌をとるために果たす植物の役割は?
    『池やその周辺をスケッチしましょう』
    ●カエルが水から上がって来る時に支えとなるもの
    ●カエルが太陽や捕食者から隠れられるもの  
    ●日中、池や周辺の植物を日陰にしてくれる植物
    ●カエルの餌になる虫が集まる植物
  4. 夜の動物
    ●どちらのポッサムを街でよく見かけますか?
    ●この二種類のポッサムは、なぜ人のそばで生息しているのでしょうか?
    ●都市の木々には洞が殆んどできません、なぜでしょう?
    『自分の庭に野生動物が現れることを楽しむ人々がいます。』
    ●野生動物の安全な生息地作りのため、彼らのできることは何でしょうか?
  5. 爬虫類の観察
    『地面をゆっくり這いながら移動するBlue-tongue Lizardは、捕食者から身を守るためカモフラージュします。』
    ●あなたはどのようにしてトカゲを見つけましたか?
    ●トカゲのすみやすい街には、どのような環境が必要でしょうか?
    『Blue-tongue Lizardは庭の植物を食べてしまう二つの外来の無脊椎動物を減らすのに役に立ちます。』
    ●その動物は何でしょう?
    (ヒント:二つとも銀色がかった、痕跡を残します)
  6. コトドリたちの森
    『植物は野生動物の生息地に重要な役割を果たします。植生をよく観察しましょう。次の三つの鳥:Red-browed Finch、Plumbed Whistling Duck、Australian King Parrotの生息地を書きこみましょう。』
    ●それぞれの鳥たちは、どの植生(地面に近い茂み・低木・木立)で暮らしていますか?
    ●鳥たちにとって植生の上の方が何故下よりも重要なのでしょうか?
    ●茶色く焼けた、羊歯はどのようなことを引き起こすでしょうか?
  7. オオコオモリ
    『オオコオモリの群れは、この町の植物園を棲みかとしています。』
    ●それはなぜだと思いますか?
    『夜、チュッチュッという鳴き声が聞こえたら、それはコウモリの鳴き声かもしれません。White Striped Free-tail Batは街中でよく見かける食虫性のコウモリです。』
    ●White Striped Free-tail Batは町のどこをねぐらにしていると思いますか?
    ●コウモリにとって安全な環境を作るにはどうしたらよいでしょうか?

■人と動物の関わりについて総合的に学ぶ場としての動物園

 動物園に足を運ぶまでもなく、都市の中でも様々な野生動物に出会う機会の多いオーストラリア。このような場所にあっても、動物たちの生息環境は悪化の一途をたどっている。だからこそWild Educationで実践するような身の回りにいる日常的な動物の観察やハンズオンを通した、野生動物に対する正しい知識の吸収は、保護や保全など具体的な行動に結びつける重要な一手段と言える。
 またHealesville Sanctuaryで実施されているWild Education「先住民たちの夢」のように、人の活動や文化的側面からみた人と動物との関わりあいなど、野生動物だけに収斂するのではなく、より総合的なアプローチが園内随所で行われている。例えばMelbourne ZOOには、アジア各地でよく見られるような水田を再現した一角が存在する。そこでは水田に集まる水鳥たちの観察はもちろん、人の手による田んぼが食物生産だけでなく、小動物の生息する空間としても有効に利用されていることなど、人と動物の共存モデルの一例として紹介されている。
 今までどちらかというと生息地の擬似的再現に注意が払われていた動物園が、人と動物の関わりについて、様々な情報を総合的にとり扱う学びの場へと移行しつつあることを改めて実感した。



参考文献

(1) Zoological Parks & Gardens Board Victoria Australia (2001). Annual Report 1999-2000
(2) Zoological Parks & Gardens Board Victoria Australia (2001). 2001 Zoo Education Service School Programs and Support Materials
(3)石田裕久・石田勢津子 共著(1999). オーストラリアの小学校. 揺藍社
(4)沖原豊 編(1981) . 世界の学校 現代教育学シリーズ10. 東信堂


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