書籍紹介マイケル・グロスロン・ジマーマン共著「インタープリティブ・センター」
〜『文環研レポート』20号より〜
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■各章の内容

  1.  インタープリティブ・センター:神聖な場所の現代の神殿
     著者らはネイチャーセンターとビジターセンターを総称してインタープリティブ・センターと言っている。ここではネイチャーセンターとビジターセンターの定義を提示している。著者らは以下のように言う。

     インタープリティブ・センターと古代の神殿は多くの共通点を持っている。それらはその「場のスピリッツ」を明らかにする。祭りや自然の現象、信条がその場の神話を作るために結合される。神話と伝説は、私達が精神的にまた個人的に、古戦場や歴史的サイト、劇的な風景などの場所と、関係づけるのに役立つ。
     神殿とインタープリティブ・センターの両方とも神聖な場所を明示する。ギリシャ、デルフアィの神殿は地球の女神ガイアに栄誉を与える。古代ギリシャ人によるこの場所の選択は偶然にされたものではなかった。今日でさえ「場のスピリッツ(地の守護神)」は強力である。
     アメリカにも同じように「場のスピリッツ」を感じることのできる場所がある。例えばヨセミテはただの公園ではない。アメリカ先住民の神話では、そこは年ごとに巡礼する聖堂であり最後の目的地である。
     人々のヨセミテへの旅は、大事に心に持ちつづける価値との深い出会いを捜し求めることである。巡礼者のような観光客はここで毎日の生活を超えるものを探し、精神の回復を見出す。
     ジョン・F・シアーズはこのように言う。「観光と巡礼がいつもの生活の制限から人々を自由にすることができる。これらが(聖人の聖堂あるいは荘厳な滝であるかにかかわらず)超越的現実との出会いを通して精神的回復を約束する。観光客が半分の巡礼者であるなら、巡礼者は半分の観光客である。」
     インタープリティブ・センターは、人々を神聖な場所と結びつけようとするとき、極めて重要な役割を演ずる。

     この「場のスピリッツ」へと導くのがビジターセンターの役割だと言う。一方ネイチャーセンターは以下のように説明されている。

     私達はなぜ、プエブロ・ボニートやアンティテム、ヨセミテ、グレースラルドのような場所に惹かれるのだろうか?あるいは近隣の、裁判所のある古い街区、町外れの森の名残、あるいは、町を流れる川に。私達のアイデンティティーの感覚は、私達が、私達の家系や、私達の文化的な歴史、私達の共同体、そして私達の風景の一部であるという感情によって強化されるのだ。私達すべては、私達自身より大きい何かに属そうと努める。
     私達の均質な、定住することのない社会のなかで場所とアイデンティティーを育てることは難しい。私達は身体的にも自分の家系から分離され、そして大量生産された新興住宅も私達を孤立させる。利便性のための技術も同じく私達の生命を衰えさせた。
     結果は私達が私達の「場の感覚」を失ったということだ。私達は未だどこにいるのか知らないでいる。
     1965年の「自然美」についてのホワイトハウス会議が以下の懸念が事実であることを立証した。合衆国は、「移動」の国家であり、民族である。流動性と変革の時代である。毎年人口の20%が居住の場所を移動する。結果として残るのは、安定性と帰属性の感覚を与えていた過去のランドマークに対するあこがれと共に、根なし草の感覚である。
     J.B.ジャクソンは以下のように言う。「場の感覚の重要性な局面は精神性、すなわち、その場所とそして人々のその共同体に感情的に結びつける儀式と祝典である」と。私たちの家系に対する興味の増大は帰属に対する私たちのニーズを反映している。パトリック・ディクソンによれば、「アメリカ人の三人のうち二人以上がもっと自分達の先祖のことを知りたがっている。家系に対する興味は、趣味でただ切手やコインを蒐集することに次いで2位を占める」と。

     共同体のネイチャー・センターは基本的な必要に対する回答である。ネイチャー・センターは共同体の祝祭と行事が、伝統へと発展することを可能とする、その地方固有のランドスケープの保存を通して、「場の感覚」を育成する。ネイチャー・センターが季節のリズムに応え、住居とランドスケープに自然の素材を用い、同じ意見の人々の共同体との交歓を創りだす。

     このネイチャーセンターの定義は私達日本人にはむしろ郷土資料館のそれではないかと思われる。がその基盤に自然が置かれている点でアメリカ的であると言える。
     いずれにしても著者らが総称し、定義したインタープリティブ・センターは新大陸での新しい歴史を開始した合衆国国民の精神的背景を探し求める極めてアメリカ的事情から生じたものと言える。
  2. 社会変化のなかのセンター
     国立公園の設立とともに開設された最初のビジターセンターは高価な冒険旅行であった旅行者の宿泊施設として作られた豪華なホテルに設置された「ネーチャー・ルーム」であった。その後自然保護運動の高まりの中で、ヨセミテ公園に1926年ヨセミテ博物館が開設された。1956年国立公園整備の抜本的改革あるミッション66のプロジェクトが実行され、この10年間に117箇所のビジターセンターが開設された。この章ではセンターの発展の歴史を社会の変化の文脈の中に置いて跡付けて行く。国立公園局の歴史的写真のコレクションが多く採用されている。
  3. デザイン:「場のスピリッツ」を敬う
     各地に展開されたビジターセンターを検証し、「場のスピリッツ」をどのように建築デザインに取り入れ、調和してきたかを紹介している。「場のスピリッツ」を大胆に引喩した建築のさまざまを見ることができる。
  4. デザインの要因
     包括的なデザインの構成要因として、サイトとの調和性、人々への奉仕性、持続性、経済性の四つをあげ考察している。各構成要因は相互に関係し、依存しあっている。このモデルは新設、改修を問わず、計画のチェック要素であり、複雑な設計過程を理解しやすいパラダイムに具体化させるものだと著者らは言う。最も多くのページがこの章に当てられている。
  5. インタープリティブ・センターの計画
     インタープリティブ・センターの計画をビジョン、コンセプト、設計・ビルドの3フェーズのプロセスを追って紹介している。
    ビジョンのフェーズでは3つの基本的疑問に答えることを要求する。「なぜ?」「だれに?」「なにを?」を分析することから施設の使命とゴールの決定、ビジターの研究、資源の分析へと至ることを紹介している・この段階の徹底的理解がその後のフェーズに重大な影響を与えると言う。
     コンセプトのフェーズではなぜ、誰に、何をの評価の結果として導き出される、全体的で創造的プロセスである。特にビジターがこの計画している施設で経験するであろうことを正確にイメージすることの大切さが強調されている。
     設計・ビルドのフェーズでは、常にビジョンに立ち返るべきだと助言している。
     各段階ごとに多くの事例が紹介されており、多様な展開が示されている。
  6. インタープリティブ・メディアとプログラム
     国立公園局インタープレティブ開発プログラムをインタープレティブ・センターのメディアとプログラム開発に適用することを提案している。国立公園局インタープレティブ開発プログラムはより効果的なインタープリテーションの開発プロセスのために1994から始まったもので、その成果はイーノス・ミルズやフリーマン・ティルデンの著作と85年に及ぶ公園局の経験の上に作られた。その基本は「効果的インタープリテーションは目に見える資源をその背後にある目に見えない意味に関連付けることである」と言うものだ。そのことからインタープリテーションは資源の知識、ビジターの知識、インタープリテーションの方法の知識の3つのコンポーネントとして整理されている。
     また展示メディアについては能動的ビジターと受動的ビジターに動的展示と静的展示との掛け合わせで分類して説明している。メディアの総括的紹介である。
  7. 時代の変化とともに
     まとめの章である。自然の時間の流れ、人間社会の変化など、インタープリティブ・センターにとって時間は永遠のテーマであると同時に、必然的に時間の影響を受ける。
     インタープリティブ・センターをゼロからスタートする贅沢を味わうことはほとんど無い。歴史や場のスピリッツ、共同体の遺産、ランドスケープの特徴など、強く展開を主導する、何かが常に我々より先に存在している。成功した計画は、この移り変わる過程を通して存在する基盤の上に作られたにちがいない。
     すべての生きているものは変化する。生き生きとしたプログラムは発展し、一方停滞した施設は腐敗し、的外れとなり、そして死ぬ。インタープリティブ・センターがどのように新しい挑戦を企てるかがその運命を決定する。ダイナミックな世界のなかで成功するための新しい方法を探すために、真のセンターはその過去の強靭さを元に作りあげられる。もし、インタープリティブなプログラムが活発であるなら、それは進展するであろう。イーノス・ミルズの言葉に「本質は到達ではなく、むしろゆっくりとした変化である」とある。変化は絶えることがない、だから計画も同じようでなければならない。聴衆が変われば、必然的に施設も再編成され、場所も新しい景観へと変容していく。

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