| 今までお話してきた展示の動向を環境教育の観点から考えてみたいと思います。展 示との一体感のある景観の中での臨場感のある体験は、観客を引き付け、強い印象を
与える効果があります。このことは、生息地の価値に気づくきっかけづくりにつなが り、環境教育の第一の目標である興味・関心を喚起する目的を果たすことに結びつく
と考えられます。インタープリテーションの応用は、展示のメッセージを具体的に表 現して、発展させることです。生息地と汚染の関係など生物多様性に関する現実的な
問題を理解したり、人と自然との生態学的な諸関係を考え、改善への意識を高める効 果があります。展示シナリオによってテーマに広がりをもたせることは、個々の生息
地を関連づけて、生息地の相互の関係を表現することを可能にすると考えられます。 特に水域においては連続性が重要なのです。水域における生物の生息空間は多様で、
「餌を採る」「洪水の時に避難する」「卵を産む」など、生活史の各段階でいろいろ な場所を利用しながら生活しているものも多いのです。そのつながりを理解するには、
やはり展示シナリオの導入が有効だと思います。以上のような観点から、アメリカで 展開されている新しい傾向は、「環境への興味・関心を持つきっかけ」を与えたり、
展示の「テーマを生態系全体に広げる」という意味において、環境教育に寄与するも のと思われます。アメリカの取り組みが進んでいる理由を文献や現場の学芸員へのヒ
アリングにより調べたところ、多くの水族館には教育部門が設置されエデュケーター と呼ばれる専門家が存在すること、研究者が展示計画に深く関わっていること、インタープリテーションを強く意識して展示計画に応用しているということなどが大きく
影響しているようです。 |
私はこれから更に詳しく、水族館の展示に関して研究を進めていこうと思っていま すが、近年の事例分析だけでも、国内における水域関連施設の展示に役立つ多くの事
が得られました。日本は世界でも有数の自然環境を持ち、昔から漁労や水運のような 水環境と関わり深い活動を通じて、様々な文化を発展させてきた歴史があります。そ
のため水域関係の施設も多く存在します。日本動物園水族館協会に加盟している水族 館は60あまりだと思いますが、細かいものを入れると100以上の施設があります。ま
た最近では、ダムや堰に隣接する資料館や河川に関する博物館を河川博物館と位置づ けて、教育活動に積極的に取り組んでいくという傾向もみられます。このような施設
がそれぞれの施設の独自性をもって展示を創造することが、環境教育の機能がより一 層高められるのではないかと思います。
この後にお話しする自然共生研究センターは国立の研究所の一施設ですが、同様の 役割を担う施設として施設の特徴を活かした独自の展示の展開が可能ではないかと思
い、現在計画を進めています。 |