〜『文環研レポート』16号より〜   
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 次のページ |

 年間100万人以上をコンスタントに集客しているシドニー水族館。その運営の視点は、娯楽を目的とした「観光」に重きを置いている。多くの人々に足を運んでもらうためのハードの整備はもちろん、様々な方法でアクセスしやすい環境を整えている。
 シドニー水族館では、他の水族館や動物園を自分たちの競合と考えていない。それよりもシドニーハーバーやビーチ、ハーバーブリッジといった集客力の大きい観光地に脅威を感じている。いわゆる「観光」目的の施設は、営利だけを追求するといったイメージが未だに日本では根強いが、シドニー水族館では「娯楽」と同じくらいのウェイトで「種の保存」と「環境教育」の面も重要視している。ここ、オーストラリアではシドニー水族館に限らず、「娯楽」と「教育」、「観光」と「保護」といった一見相容れなさそうなテーマの両立を模索しているようだ。
 本稿では、様々な面からアクセスが配慮されているシドニー水族館について、その具体例を紹介し、考察を加える。 [写真1]

■シドニー水族館の使命と概要
 シドニー水族館は、オーストラリアの海洋・河川における様々な水生生物650種、11,000点を国内外の人々に紹介する目的で1988年7月に開館した。
 「動物を介した楽しい経験を提供する」「展示を通して教育や環境教育に資する」「水生生物の生息環境と生物そのものの保護・保全のメッセージを水族館から発信する」ことを使命にしている。
 建設は元々、シドニー水族館の位置するニューサウスウェールズ州(以下NSW州)の州政府が整備を予定していた。しかし多大な資金が必要であることから計画を断念、入札を経て現在の運営母体であるSydney Aquarium Limited が推進するにいたった。
 Sydney Aquarium Limitedは営利を目的とした民間企業で、1993年6月オーストラリア証券取引場に上場しており、同じシドニー市内にあるマンリー・オーシャンワールド(註1)の経営も合わせておこなっている。オーストラリア国内では、水族館設立から運営に至るまで、民間会社による推進が多数を占めている。
 水族館の建設は1987年5月から開始された。展示スペース4,000m、水中トンネルの長さ57メートル、総水量770万リットルに及ぶ施設を総事業費3,000万AUドル(=18.6億円)かけて完成させた。(註2) 豊富な種類を誇るサメ、シドニー湾を直接見ることのできる海中ドック、マレー・ダーリン河川系の珍しい淡水魚等、その設備と広大な規模、保有水生動物数において世界最大級の規模を誇っている。

| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 次のページ |