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 ヨセミテ国立公園は、アメリカ・カリフォルニア州シエラ・ネバダ山脈内にあり、サンフランシスコから自動車で約5時間という比較的足の便の良いところに位 置している。3,029平方キロ(東京都の約1.5倍)もの広大な面積の中に世界一の一枚岩エルキャピタン、ハーフドームなどの壮大な風景のヨセミテ渓谷、世界一の大きさと寿命をもつジャイアントセコイアの森、そして高原地帯、山岳地帯など多様な環境が存在する。
 ヨセミテの歴史は、数億年前にさかのぼる。海底にあった厚い層が造山運動により隆起し、また地中のマグマが深部から上昇し、冷えて固まって花崗岩の層を形成、隆起とともに氷河、雨水による浸食が続き、現在の海抜4000mもの山々と標高差1000mもの渓谷が誕生した。  ヨセミテは、その目をみはる景観を後世に伝えることを目的に1864年州立公園に指定された。1872年にはイエローストーンが世界初の国立公園として指定され、ヨセミテもそれに遅れて1891年に国立公園に指定されたが、実質的には国立公園制度を生み出す原点とも言える。ヨセミテ国立公園誕生にはシエラ・クラブの創始者でもあり「アメリカ自然保護の父」とも呼ばれるジョン・ミューアの活動が大きな影響力をもっている。
 白人がやってくる前には、ここには先住民の暮らしがあった。渓谷に住んでいたアワニチ族は、オークの実を貯蔵して主食とし、周辺の諸部族と交易をしながら自然と共生して暮らしていた。彼らの生活の様子はいまではヨセミテ・ミュージアムでの展示や解説プログラムを通 してうかがい知ることが可能である。
 ヨセミテにはカリフォルニア・ブラックベアを頂点とする77種類もの哺乳類、両生類と爬虫類40種、鳥類242種、開花植物1,400種、樹木37種が記録されている。自動車道路は576km、ハイキング道の総延長は1,280kmにもなり、広大なバックカントリー(原生地域)に足を踏み入れることもできる。
 このような大自然を保護し、適切な利用を促進するために国立公園局公園管理事務所はビジターセンターでの展示・掲示や、刊行物、サイン、レンジャー・プログラムなどを通 じ、さまざまな情報提供を行っている。
 ヨセミテ国立公園は連邦政府の直轄地(営造物公園)であり、カリフォルニア州の統治がおよばない、そのために公園管理事務所は自然、動植物、文化財等の保護と利用のほか、警察・消防などの公共サービス、園内施設の経営管理まで様々な責任を担っており、多くの職員が働いている。日本の国立公園は民有地や公有地、国有林などが混在するところへ規制の網をかけているだけであるため、その制度も管理システムもかなり異なるものである。
 いまでは国内外から年間400万人ものビジターがヨセミテ国立公園を訪問する。「バックパックひとつを担いで何日もかけて大自然のトレイルを歩く」「キャンプ場で家族や仲間たちとゆったりと過ごす」「断崖絶壁を登るフリークライミング」「由緒あるホテルで優雅に過ごす」など、興味や体力と予算に応じて多様な楽しみ方ができるのもヨセミテの魅力といえる。
 公園管理事務所では「自然の保護と利用の両立」という一見相矛盾する命題をかかえながら、新しい「ヨセミテ渓谷プラン」を立案し、実行しようと試みている。これは渓谷への自動車での来客を制限し、自動車道を本来の草原へと復元しようとする計画である。
 一方で大規模な岩盤崩落や森林火災も毎年のように起こり、1997年には「百年に一度」とも呼ばれる大洪水にも見舞われるなど、ヨセミテの自然景観は歴史の中でいまも作られ続けている。(西村仁志)

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