|
|
2004年1月25日、麻布十番のレストランで、最新のこども向けデジタルワークショップを一同に集めた博覧会“ワークショップコレクション2004”が開催された。こどもたちが自分の表現方法を見つけ出す試みとして、NPO法人CANVASが主催した。創造性や表現力に優れた次世代を育てたい、と思う様々な分野の方々によって、14種類のワークショップが紹介された。この、従来のアナログの表現手段と最先端のデジタル技術を駆使した「遊びの場」に集まったのは、こども、おとうさん、おかあさん、お年寄り、学校の先生、アーティスト、企業や官庁、博物館関係者など総勢500名。会場は熱気に包まれた。
天井からずらりとたくさんの糸電話がぶら下がる。1階、中2階、2階、3階。むかし銀行として使われていたレストランの入り組んだ不思議な空間を紙コップがうめる。紙コップアーティストのLOCOさんによる “糸でんわで世界とつながる!”ワークショップだ。こどもたちは、コップを文字や絵で飾り、自分のインスタント顔写真をコップの底にはりつける。そして、自分に見立てた自分だけの糸電話を会場のいろいろな場所に自由につなぐ。糸電話を使って話をする。紙コップと糸というシンプルな素材を使って、人と人との繋がりを感じ、世界とつながる楽しさを体験する。1対1だけではなく、10人とでも100人とでも1000人とでも話ができる。こんなにもたくさんの糸が張り巡らされていたことに、参加者は驚く。この空間はまさにインターネットの縮図だ。世の中の縮図かもしれない。普段は気づかないが、みな繋がっている。一つのコップを揺らすと全部のコップが揺れる。みんなが糸で繋がっていて、1本でも糸がきれると、そのコミュニケーションはなりたたない。世界とつながっていく、みんなで一つの世界をつくる。コミュニケーションの原点を教えてくれた。
LOCOさんのワークショップの隣では、たくさんのこどもたちの絵が、樹に咲く花のように、次から次へとうまれ、プロジェクターに映し出されていく。アドビシステムズ株式会社協力のもとD-project が提供した“ネットワーク・カンブリアンゲーム=アイデアの爆発実験”だ。コンピュータと簡単なペイントソフトを使用して、ひとの絵に自分の発想を加えながら新しい絵をつなげて「連画」の樹を成長させていく。これによって、自分の絵がまた誰かの絵のイメージの種になり、たくさんの絵が続いていく。ひとつ、新しい“絵”の種を植えると、そこから世代を経てたくさんの花が咲く。全体の俯瞰図が、まるで、「花畑」のように広がる。参加者それぞれのアイデアが爆発し、参加者がみんなでひとつの作品を創りあげていくような感覚を味わえる。イメージが連鎖し、互いに刺激し合いながら創作を楽しむ新しいスタイルの表現方法がそこにはある。一人一人の個性あふれる絵と、それに繋がる友達の絵。自分がつくったものが他の人の世界やイメージと繋がっていることを感じる。これも参加者のお互いの感性やつながりを感じ取れるワークショップである。
他にもたくさんのワークショップがブース形式で紹介された。粘土、紙、コンピュータなどを使ったクレイアニメ制作ワークショップを提供するのはフューチャーキッズ。ストーリー作りから、キャラクターの制作、一コマずつの撮影、編集・音入れまでを、こどもたちが協力してひとつのアニメーションを創る。NTTアドバンステクロノジのブースでは、パソコンのマウスを使って、動物やロボットなどをつかんでいるように動かせる新感覚の映像を制作。ZOU STUDIO, Incのブースでは、自分の描いたイラストを立体化してオリジナルCGキャラクターを創った。映像制作といえば、トリガーデバイスが開発したシンプルなアニメ制作デバイスも目をひいた。パラパラマンガの原理の応用で、手押し車を押すとアニメーションが創れる「アニマカート」は、お手軽で誰でもが参加できるワークショップとなった。
NPO学習環境デザイン工房は、そんなこどもたちが描いた作品のプロセスを振り返るワークショップを行った。自分が描いた作品を、書きはじめから終わりまで再生してくれるソフト「脳の鏡」を使うことで、こどもたちは制作過程で感じたことを再認識する。
ラジオ局のDJ、ディレクター体験コーナーもあった。(株)プロムナードが提供したFMラジオ局の実際の放送システムを使って、自分たちで番組を構成していく。臨場感あふれる手作りラジオ番組がたくさんできあがった。
小さなコンピュータ「クリケット」を使ったオリジナルの動くおもちゃをつくるワークショップを行ったのは、CAMP。モーターやセンサーと身の回りのいろいろなモノを組み合わせて、自分だけのプレイフルなおもちゃをつくった。インターネット上のプライベートスペースCocoaを使って、カメラ付ケイタイ電話を用いた宝探しゲームを行ったのはNTTコミュニケーションズ。レゴも“遊びながら学ぶ”ワークショップを開催。カラフルなレゴブロックを使って自由なオブジェをつくるレゴルームは、子どもたちにとってはまさに最高の遊び場所となった。
会場全体が一体となって高揚していく。ドン、ドン、シャカ、シャカ。みんなで輪になって即興的につくりあげるパーカッションのアンサンブル、「ドラムサークル」の開催時間には、全ワークショップを止め、会場のすべての人がドラムに集中した。最も原始的で、誰でもすぐに演奏できる親しみやすい楽器を用いて自己表現をする自由なコミュニケーションセッション。それぞれが思い思いに感じたことをリズムで表現する。みんなが一体感を感じながら時間を共有する。音楽制作者連盟の協力のもと、オルケスタ・デル・ソルのペッカーさんがファシリテイターをつとめた。隣では、アットネットホームが、本格的な機材を使ったDJワークショップを開催。新しい音楽表現手段としてのDJリミックス。参加者は、最新の機材を使って、音を自分自身の表現として伝えることの感動を知り、自分だけの音楽表現を模索した。
オムレツ、ピザ、ケーキ。こどもたちは、色とりどりの粘土を使って、レストランのメニューを次々につくりあげていく。造形自在で数十種類の色が作れる粘土を使ってミニチュアの食べ物を作るワークショップを提供したのは、造形絵画教室アトリエミュレット。こどもたちはずっと机から離れない。粘土をこねる触感には、デジタルはまだ勝てないのかもしれない。一日が終わったとき、ミニチュアのレストランにはこどもたちがつくったたくさんのご馳走が並べられていた。
こうした様々なワークショップを一堂に集めるイベントが開催されたのは初めてのことだ。予想を上回るお客さんに来ていただき、取材も多数入った。コンテンツを創り、表現を育むことが大事だという認識が広がっている、ということなのだろう。今回のイベントの最大の目的は、『こどもの創造・表現活動を支える様々な分野からの専門家の参加と交流の機会を創出し、ワークショップに関わるすべての人々の出会いを促進する』ことにあった。参加するすべての人と一緒に一つの空間を作りたい、新しい交流の場を広げて欲しい、そんな想いがあった。
CANVASはこどもたちのクリエイティブ活動のプラットフォームだ。各地でみられるこどもたちの創作・表現活動を、全国で共有化する、活動をしている方々の熱い思いを面的に交流させる、そのための“場”を提供したい。こどもたちが何かを創りだす場。自分の気持ちを表現する場。創造し、表現したものを共有・交換する場。CANVASは「場」そのものだ。
多元的で新しい社会を築き、新しい表現を拓くのは、こどもたちの世代だ。こどもたちが最大限に活躍できるよう、環境を整える必要がある。広い運動場を整え、遊び道具を持ち込み、仲間を集め、みんなが楽しく真剣に活躍できる場を作りたい。デジタルで繋がる時代に、こどもたちに、新しい表現や、豊かなコミュニケーションを生み出して欲しいと思う。新しい世の中を築いていって欲しいと思う。
筆者への質問、コメントはinfo@bunkanken.comまで。 なお頂いたメールは、 ホームページやメールマガジン等に掲載することもありますので、 あらかじめご了承ください。 なお、掲載時に匿名もしくはペンネームを希望の方はその旨を明記してください。