ジャーナル

博物館のリストラにおいてこそ求められる行政の調整能力(2004年12月11日掲載)

by 高橋信裕
2012.02.01

 

またぞろの感の埼玉県の博物館リストラ計画

 東京都をはじめ千葉県、川崎市といった首都圏で、自ら設置運営してきた博物館の統廃合が進められているが、今回埼玉県が博物館施設の再整備計画(リストラ)を公にした。現在の8館ある県立の博物館施設を4館に統廃合しようとするもので、そのねらいは、ミッションや機能が重なる施設をグループ化し、それぞれ一つにまとめ、直営以外の博物館は、地元の自治体に移管したり、民間の事業者等に運営を委ねる、というものである。

 要約すれば、

  1. 「さきたま資料館」と「歴史資料館」、「埋蔵文化財センター」を“野外系総合博物館”として1館に整理統合、名称も「古墳と中世館の博物館」とし、歴史資料館はガイダンス機能を除いて、地元自治体に移管、埋蔵文化センターは廃館し、建物は新体制の博物館の収蔵庫にする。(平成18年度)
     
  2. 「県立博物館」と「民俗文化センター」を統合し、「歴史と民俗の博物館」にするとともに、「民俗文化センター」は利用停止、廃館か地元自治体への移管をさぐる。(平成18年度)
     
  3. 「自然史博物館」と「川の博物館」は「自然と川の博物館」として1館にまとめ、本館、分館の役割を持たせ、分館の「川の博物館」は、指定管理者制度のもとに民間事業者等に運営を委ねる。(平成18年度、指定管理者への移行は平成19年度)
     
  4. 「近代美術館」は再編整備し、機能統合や運営統合を進めて経営の効率化を図る。(つまり、そのまま継続)

 

 

今こそ問われる「都道府県」の調整能力

 現在進められている行政主導の統廃合の背景には、博物館の機能や役割を見直し、それぞれが互いに分担しあい、連携しあうというネットワーク体制を構築し、それらがうまく機能さえすれば、自ずから効率化が図られ、それぞれがスリムであっても社会の要請に充分対応でき得る、という理想論がある。

 その調整こそ「都道府県」の役割であり、国や市町村、民間の間にあって、行政としての真価が問われていることを強く自覚して欲しい。

 

 

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高橋信裕 (たかはしのぶひろ)

文化環境研究所所長

1948年高知県生まれ。
1972年慶応義塾大学文学部卒業後、株式会社乃村工藝社入社。以後、文化施設の企画設計業務に従事。1995年より現職。
2003年より大阪樟蔭女子大学非常勤講師、2004年より法政大学大学院非常勤講師、國學院大學非常勤講師、常磐大学兼任教授、2007年より慶應義塾大学総合政策学部SFC非常勤講師、札幌市立大学非常勤講師、2012年より早稲田大学非常勤講師などを務める。

【主な著書・論文等】
『ミュージアム&アミューズメント』(編著)六耀社/SD選書『ディスプレイデザイン』(共著)鹿島出版会/『ディスプレイの世界』(共著)六耀社/『博物館展示法』(共著)雄山閣/『博物館情報論』(共著)樹村房/『地域博物館への提言』(共著)ぎょうせい/「わが国に博物館が根づかない理由」文環研レポート12号・13号/「地域博物館における地域学の課題と展望」文環研レポート17号/「公による博物館、美術館の危機的財政状況」日本ミュージアム・マネージメント学会会報21号/「生涯学習時代に苦学を強いられる博物館」文環研レポート19号/「我が国のミュージアムの現状と今後の方向性」文環研レポート21号/「博物館における展示観の研究(1)」文環研レポート23号/「わが国の文化環境とこれからのミュージアム」ブックレット15号、など。

【主な業務】
国立民族学博物館、高知県立歴史民俗資料館、岩手県立博物館、宮沢賢治記念館、遠野市博物館、遠野城下町資料館、仙台市博物館、鹿児島市維新ふるさと館、高知市横山隆一記念まんが館、高知市龍馬の生まれたまち記念館、花巻市博物館、長崎歴史文化博物館、など。
(2012.9.13現在)