【Cultivate Vol21 特集◎文化力と都市環境】より

「海峡」を新たな文化創造の資源と捉えるグローバルなミュージアム群構想の展開

北九州市長 末吉 興一 プロフィール
インタビュー/高橋信裕



市民の主体性をサポートする環境づくりが行政の役割

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ドラマシップからの門司港レトロ地区の眺望
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門司港ホテルからハネ橋を見る
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門司港レトロ地区
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北九州市立自然史歴史(いのちのたび)博物館
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リバーウォーク九州
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北九州市立自然史歴史(いのちのたび)博物館

高橋――門司港レトロ地区というと、お年寄り向けと思いがちですが子どもたちもずいぶん来ていますね。集客対策はどうされてるんですか。

末吉――対策でというよりも、お客さんが来始めてみると地元の人たちとまちづくりのボランティアがあらゆることを始めたんですね。ボランティアのNGOやNPOの会がたくさんありまして、三六五日のうち二〇〇日は何か行事をやっています。市役所には、まちづくり推進課というのがあり、その中に一緒に入ってやっています。一つの成功がでてくると次々とうまくいくという変化ですね。むしろ市民に引っ張られているような感じです。
 「門司まちづくり21世紀の会」というのが最初だったんですが、どんどん衰退していくのを下関の会といっしょに考えてどうにかしようと、関門花火大会をやりました。実際古い建物を残し始めると自分たちもこれを活用していこうと「門司レトロ倶楽部」というのが自発的にできて、ここの管理をどうしていくのかなどと言い始めたり、バナナのたたき売りを伝えていくという保存会ができたり、観光ボランティアの会ができています。ここでは、ハッピーリタイアした人たちが勉強して参加されるなど、人的な広がりが活動を支えています。その人たちの行事が二〇〇日くらいあります。行政も一生懸命やっています。

高橋――行政が環境を整備して市民がそれを受け取って育てていくというかたちですが、民間への補助はどうなっていますか。

末吉――団体の活動に対してはありませんが、管理をしてくださいといった形での補助はあります。

高橋――市長の語録の「市民との癒着はいけないが、密着はしろ」ということでしょうか。

末吉――そのとおりです。今まで市民との関係においては行政は一歩も二歩もおくということでしたが、今は民間と知恵を出し合わなくてはいけない。民間を活用しなくてはいけない、役所だけでやろうとすると大体ダメになっています。民間と話しのできる職員をつくるというのはなかなか難しいですよ。やはり商売人の人と官僚とは違いますからね。そのためには懐に飛び込んで真意を解るようにならないと判断できないでしょう。そういう修羅場を私は何回もくぐってきましたからよくわかります。

高橋――市民との連携無しには何事もうまく運ばないんですね。

末吉――計画段階で相談しないとダメですね。私たちの所では計画のところで時間のかかったほどうまくいっています。金が来たから建物を早く造れなんていうのはたいていやり損なっています。仕組みを作ったからうまくやれというのでなくて、つくってみて一、二度やってみてからです。この辺の事業は競争になっています。このあたりには古い建物がたくさんありますから、芸術的な陶芸などやっている人を全国に公募して廃校を利用して入ってもらうというようなこともしています。これで今、門司港レトロの全体計画の五分の三くらいができています。海峡ドラマシップは、公共的な大きな施設としては最後ですね。
 平成15年4月の海峡ドラマシップのオープンに続いて、8月には九州鉄道記念館がオープンしました。これでやっと門司港地区も点的な観光施設から面的な観光施設へと広がりを持つようになりました。海峡ドラマシップには2つのレストランと8つのテナントショップが進出し、民間投資という面では一定の成果を上げています。今後は、ホテルや商業施設の建設といった民間の投資が加わっていけば、さらに充実した活気のある観光拠点に発展できると思います。今後とも行政として民間が進出しやすい環境を整備し、海峡ドラマシップを含めた関門地区がさらに充実した観光拠点となるよう努力していきたいと考えています。

高橋――市長の語録のなかに、法令がない、予算がない、前例がない、を理由に行動や思考を止めるな、とありますね。

末吉――もう一つ「方針がない」も入れるとすべて断ることができます。役所は大体そういうことになっているんで、思考を中断するなということを言っています。考えることを止めてはいけないと。

高橋――市長の経歴を拝読しますと官僚のご出身なのに柔らかいですね。

末吉――はい。私は28年官僚をしましたが自分の意見が通るようなったのはそのうち5年間くらいです。下にいるときはあっち行けこっち行けと言われているだけです。私は市長になって17、8年なのでいわゆる官僚とは違います。間違って官僚になったと思えばいいんですが、官僚の悪さが解っているわけだからその逆をやればいいんです。官僚時代でも私は原案をつくるときはダイナミックにいろいろとやってきたんです。上司にもいろいろ言ってきたので疎んじられて行かなくてもいいところに行ったこともあるくらいです。(笑)
 ただ、今でも筋が違うと思うときは自分でも止めさせてしまおうという面がでます。勝ち筋が見えたと思うとき手堅くいく人がいるでしょう。ああいう感じなんです。狙ったところは外してはいないつもりです。官僚の良さは解っているし悪さを除外していけばいいんでしょう。

高橋――市長が北九州の歩みを分析して大体四つに分けておられて、その四つめが市長の時代ですが、その中の「にぎわいのまちづくり」として門司港のレトロ地区の整備や、わっしょい100万市民の夏祭りなどがあります。今後はどのように展開されるのですか。

末吉――今までは、人を集めようとか、個々の文化生活をエンジョイしようという考えのない気質のまちだったと思います。今後は、これだけ状況が落ち込んでくると重工中心にといっても中国と競り合うのは大変です。そこで、都会でありながら田舎の良さを知ったまち、それが北九州だと思います。住み易さの面で医療機関が多いとか物価が東京に比べると8割くらいであることなど、市民生活のプラスの面をみますと、都会でありながら田舎の良さ自然のあるまち、それに市民が何か自慢できるようなまちにすることはできます。
 くり返すようですが、誇りを持って住めるまちにしたいんです。市民が文化砂漠と自分を卑下するのではなくて、誇りと自信を取り戻すことが最も必要なんですね。

高橋――どうもありがとうございました。




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