【Cultivate Vol23 特集◎観光再生の時代と文化環境】より

地域の熱意やアイデアと連携で国際競争力のある総合的な観光地づくりを

国土交通省 総合観光政策審議官 鷲頭 誠 プロフィール
インタビュー/津田雅人



空洞化する日本を救うビジット・ジャパン・キャンペーンは

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鷲頭 誠 Makoto WASHIZU

津田――「ようこそ日本、ようこそジャパン」のキャッチフレーズがあちこちで目に付くようになってきました。『カルチベイト』の読者は博物館の関係者が中心で、それぞれに地元の文化を担っている人々です。その人たちにとっても、観光立国がどのような影響を地元に与えるか、関心があるところです。今日は「ビジット・ジャパン・キャンペーン」政策について伺いたいと思います。まず、そのきっかけからお話ください。

鷲頭――キャンペーンが出てきた背景はいくつかあると思います。まず、日本の人やモノがみんな海外に出ていってしまい、ある意味で日本が空洞化しているという状況があります。かつて地方は工場を誘致し、それによって雇用が出て税収が増え、豊かになるという形で発展してきました。それが今は工場も海外へ行ってしまう。人は都会に出ていって地方は高齢化してしまう。その中で地域を活性化し、再生するためには何があるか、と一生懸命考えたときに、やはり観光客の誘致というのが大きなインパクトになると思ったわけです。地方は、外国だけではなく、いろんなところからやってきた人々と交流することによって生き生きとする。そうすると、それが住んでいる人の自信につながり、お金も落ちる、まさに一石二鳥であり、観光振興は、地域活性化のテーマとしてとても有効であると考えられるようになりました。一方で一三〇〇万人の日本人が海外に出ていくのに、外国からの旅行者は五〇〇万人くらいだという現実があります。外国人旅行者を誘致するという観点からは、アジアの中でも日本は後進国なんです。そういうところから、外国の方に日本を知ってもらい、交流することによってお金を落してもらい、地域も生き生きするというのは、とてもよいことではないかということで、国を挙げて取り組んでいくことにしたのです。

津田――現在に至る大きな流れはどのようなものなのでしょうか。

鷲頭――「日本に来てください」というのは、運輸省観光部時代からやってきたことではありますが、今度の「ビジット・ジャパン・キャンペーン」は、官邸主導で、国全体としてやるようになったというのがそもそもの発端になっています。一役所がやるのではなくて、政府全体として取り組んできている点で、力強い動きといえます。発端になったのは昨年1月31日の小泉首相の施政方針演説です。その中で二〇一〇年に訪日外国人旅行者を倍増させて一〇〇〇万人にするという目標が掲げられました。それを受けて観光立国行動計画が作られ、その中で「ビジット・ジャパン・キャンペーン」が具体的に出てきて、石原国土交通大臣の観光立国担当大臣任命などの動きがありました。総理が「ようこそ、JAPAN」とPRビデオに出演し訪日を呼びかけたり、木村佳乃さんを観光広報大使に任命したり、石原大臣がドイツやフランス、韓国に行って直接、誘客活動を行うなどしました。

「住んでよし訪れてよしの国づくり」の三本柱

津田――その中で、観光立国の懇談会が開かれ、各界の方々が日本が観光立国になるためにはどういうところに力を入れたら良いのか、提言されていると思います。大きな流れの中で、住んでいる人間の側として一つひとつの地域の文化を大切にすべき、などの意見があったかと思います。そこでは観光の捉え直しが提言され、それが行動計画側に移ってきていると思いますが。

鷲頭――そこでは「住んでよし、訪れてよしの国づくり」ということばが出てきました。自分が住んでいてイヤな街にお客さんが来て楽しいわけはない。外国の良い観光地を見ても、住んでいる人が楽しく自信を持って住んでいるからこそ、訪れる人も楽しめるということになっているわけです。逆に言うと、良い観光地をつくればおのずから観光客が来てくれるだろうということだと思うんです。観光のためだけの町というのはありえませんから、そこに住んでいる人も含めてトータルで良い観光地ということになります。つまり、そのような視点を持って観光地づくり をしていくことが必要だと提言されたわけです。観光立国行動計画の中では、「おいで、おいで」と外国に対して日本の良さを発信することとともに、日本の観光地に来た外国人旅行者が「良かったな」と思って帰ってくれるような観光地づくりが柱としてあげられています。

津田――3つの柱がありますね。

鷲頭――具体的な取り組みとしては、日本ブランドの海外への発信ということから、先ほどお話しした「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を韓国、台湾、アメリカ、中国、香港、ヨーロッパではイギリス、フランス、ドイツの重点地域を中心にやっています。その中では、小泉総理や石原大臣が出演した日本のPRビデオを活用したトップセールスを行ったほか、韓国との間では、来年が日韓国交正常化4 0周年に当たりますから、二〇〇五年を日韓共同訪問の年として、日本のお客さんも韓国に行き、韓国からも多くの人が日本に来るようなことをやろうとしています。実際に、日本では女優の木村佳乃さんを日本の観光広報大使に、韓国では同じく女優のチェ・ジウさんを韓国の観光広報大使に任命するなど、来年に向けて着々と進めているところです。その次が、観光立国に向けた環境整備で、空港での入国審査時間を短縮したり、ビザ免除や発給対象地域の拡大といった、外国人旅行者の円滑な訪日を実現する環境整備を、関係省庁全体で取り組んでいます。他にもアルファベットと数字だけ見ればどこにでも行かれる地下鉄のナンバリングや、各観光地で4〜5ヶ国語の観光案内を用意するなど、外国から旅行者が来やすくし、日本に来てひとり歩きしやすくするということも考えてやってきています。3番目の柱は、日本の魅力・地域の魅力の確立で、その中では、ご自身の知恵やご努力によって地域の観光振興を成功に導いた方々を「観光カリスマ」に選定し、ホームページでその情報を発信する「観光カリスマ一〇〇選」を行っています。いま、7 4名の観光カリスマがおり、1 0月からは、その方々の取り組みのプロセスを講義や現場体験を通じて直接伝えようと、「観光カリスマ塾」が開始されました。さらに、観光交流空間モデル事業というものもやっています。複数の地域が連携して、観光をテーマとした地域づくりを進めるうえで、この取り組みに国がお金を出して支援するというものです。例えば能登半島の場合、空港ができましたから、それを振興するという観点から「ふるさとタクシー」という格安な乗り合いタクシーを運行する取り組みや、能登の産品に対してNPOが「能登マーク」という統一マークを付けて認証する取り組みなど、能登半島全体を観光地として紹介する新しい取り組みが実施されています。去年は8カ所が選定されましたが、今年は1 6地域から応募がありました。どこを選定するかは、ホームページ上で行われた国民の皆さんによる採点などを参考に、地域固有の特性を踏まえた効果の高いものを選んでいこうと考えています。「発見宝探しデータベース」というのも、国土交通省のホームページ上に作っています。それぞれの市区町村や国民の皆さんからそれぞれの魅力をデータベースに登録してもらい、それを国内外に広く発信するという、いわば座敷貸しのようなものです。現在、市区町村から八九七件、個人から一一三件の情報が集まって掲載されています。

津田――地域一観光というのが変換してデータベースになっていったということですね。そういう中で次々と政策が発表され、具体化されていくところだと思います。今後はどういうところに力点を置いていくのでしょうか。

鷲頭――ひとつには、外国から人をよんでくる。二つめは、よんで来た人たちが楽しめる観光地をつくる。その二つが、これから我々が取り組むべき仕事だと思っています。まずよんでくる方については、1年半ほど「ビジット・ジャパン・キャンペーン」をやってきて、外国のメディアや新聞に広告を出したり、旅行博 に参加したり、外国の旅行会社の人を招いて具体的な商品を作ることなどをやってきました。効果のあるものもあれば、それほど効果のないものもあります。そこで現在、客観評価をしているところで、今後は、効果のあるものに重点を絞って来客誘致をやっていこうと思っています。
また地域的にも重点化を考えており、たとえば9月1 5日から中国の観光ビザが1市4省に拡大しました。今までは2市1省でしたが、その時の対象人口が1 . 1億人だったのに対し、拡大によって3 . 7億人に増えました。可能性がそれだけ広がったのですから、その地域に対して重点的に売り込もうと思っています。また来年は愛知県で『愛・地球博』がありますが、その期間中、韓国人旅行者の訪日観光ビザ免除が決まっています。それによって韓国からの観光客が来やすくなりますから、重点的に韓国にも売り込みをしていこうと思っています。さらに中身もただ新聞などに「日本に来てください」という広告を打つだけではなく、具体的なツアー商品に結びつくために、旅行博に参加した際に商談会をやったり、まだまだ根強い「日本の食事は高い」というマイナスイメージに対し、回転寿司を紹介するなど、それらを払拭するようなキャンペーンをやっていこうと思っています。
もうひとつの柱である観光地づくりについては、来年度の予算で「観光ルネサンス事業」として13億円を要求し、新設しようとしています。いま、観光地として成功しているところは、国や地方自治体が作ったのではなく、民間の方々の長い間の熱意や取り組みが実ったものが多いでしょう。小布施や伊勢のおかげ横丁など、みんなそうです。地元の人たちの熱意とアイデアが、観光地づくり、まちづくりにしっかりつながっています。そのような成功事例から、民間の方々の取り組みを観光地づくりに積極的に取り入れて進めていけるよう、今まではお金の問題で実らなかったものに対して補助金を出すなど、「このお金をムダにしないで、よりよい観光地づくりをしよう」と、補助金が求心力となって地域の観光振興が後押しされるような刺激になればよいと思っています。また、それが、まちづくり交付金や景観形成事業などの公共事業と連携することによって、総合的な観光地づくりにつながり、その結果、国際競争力のある観光地が地域につくられるものと考えています。以上の2点が、来年度の重点として取り組んでいきたい分野です。




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