【Cultivate Vol27 特集◎アメリカのチルドレンズ・ミュージアム事情】より

社会への使命観と競争原理が理想的な運営への探求心を支える

(財)つくば科学万博記念財団理事 倉本昌昭 (財)つくば科学万博記念財団参事 許斐修輔 プロフィール
インタビュー/高橋信裕



子どもの興味を引き出し生活のための知識を吸収させる

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ボストンCM
(※チルドレンズ・ミュージアムはCMと略記)
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インディアナCM
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シャボン玉遊びのコーナー(ボストンCM)
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電車遊びをする子どもたち(ボストンCM)
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人体をテーマにした展示コーナー(マンハッタンCM)
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水をテーマにした展示コーナー(ボストンCM)
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未就学児のためのコーナー(マンハッタンCM)
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絵本の主人公をテーマにしたコーナー(マンハッタンCM)

高橋―現在、AAMに加盟しているチルドレンズ・ミュージアムは全米で150館くらいありますが、いま新たに80の館が計画されているそうですね。

倉本―一館あたりの設立にかかる費用が平均1410万ドル。80館だと合計約11億ドルくらいになります。10億ドル以上のお金を新たに集めてチルドレンズ・ミュージアムをつくろうという計画が進行中なのです。

高橋―チルドレンズ・ミュージアムの特色として住民対策があるというお話でしたが、それは地域性というものを意識しているのでしょうか。

倉本―チルドレンズ・ミュージアムでは科学や数学の教育にも重点が置かれていますが、いまはソシアル・サイエンスやヒューマン・サイエンスに力を入れています。アートなども含め、総合的に生活について必要な知識を子どもたちにあたえる。例えば、ひとつの村で生活をするときには、役場があり、銀行、消防署、警察などがあります。生活をするためにはそうした機関が必要で、それらはどういう役割を果たして、そこではどういうことが行われているのか。そうした生活についての基本的な知識なども子どもたちが展示を通して、遊びながら吸収できるように考えられている。

高橋―チルドレンズ・ミュージアムでは親や学芸員、エデュケーターなどいろいろな人が介在しますが、それぞれの役割分担についてもしっかりとプログラミングされているのでしょうか。それともある程度自由に、それぞれの立場や機会でやっていくのでしょうか。

倉本―子どもたちをサポートするインストラクター的な人はそれほど多くはないですが、親が一緒に行って子どもを遊ばせながらいろんな教育をする。教えるというよりも、むしろ子どもの考え方を引き出してやるということを考えて対応しているようですね。

高橋―今回、実際に現地を訪問して、いわゆる運営のマニュアルといったものがあまり前面に出ていないというふうに感じました。それぞれの館で親と子ども、インストラクターの関係も違っている。画一的なマニュアル的なものに対して、アメリカでは多文化的な価値観が大切にされていると思いました。

許斐―マニュアルがあるとしても、いわゆる棒読みすればいいようなマニュアルではないのだと思います。例えば、子どもと対応するときもいきなり答えを教えるのではなく、まず子どもに質問してみる。親が子どもを扱うときの見本になるためにも、あらかじめシナリオに書かれた通りに対応するのでは駄目なのだと思います。エデュケーションと言っても、知識を教えるとか、あたえるという考え方ではなくて、モチベイトする。なにかやってみたいと思わせるような場面をつくっていく。そういうことに重きが置かれているのだと思います。
 プログラムに関しても、それぞれのチルドレンズ・ミュージアムで呼び方や表現が違います。アート、カルチャー、サイエンスと分類しているところもあれば、カルチャーの替わりにヒューマニティと表現しているところもあります。カルチャーという言葉も館によっては、言葉でのコミュニケーションを問題にしている。特にアメリカの場合はヒスパニック系の住民が増えていますから、スペイン語の問題が大きいのです。
 同時に、チルドレンズ・ミュージアムに来る子どもの年齢の幅はそれほど広くはないですが、さらにそれを細分化して小さな子どもたちのためのコーナー、それよりもう少し大きな子どもたちのためのものなど、年齢分けに関してきちんとしたポリシーがあるような気がしました。

高橋―アメリカのチルドレンズ・ミュージアムのターゲットが、近年、低年齢層化する傾向にあります(図2参照)。脳科学の裏付けもあって幼児期の教育が重要視されてきているということですが、それ以外にもっと社会的な理由があるのでしょうか。
図2
図2:米国チルドレンズ・ミュージアムのターゲット年令

倉本―ターゲットの年齢層については、館によっていろんな考え方があり非常に幅が広いんです。最近は、0歳から14歳までの幅広い形でターゲットを考えている館が多いようです。そのなかでも0歳から10〜12歳の館が全体の約半分です。次に多いのは2歳から12歳。3番目には、1歳から12歳が多い。さらに各館によって非常に細かく子どもの年齢層を分けているところも見られます。
 同伴する親も母親に限らず、父親や祖父、祖母など、いろんな家族と一緒に来ています。やはり育児所、保育所ではありませんから、家族が一緒に行って、展示を見せて遊ばせる。なにかを教えるというより、むしろ遊びを助け、そのなかから考える力を育てるという形で親が対応しています。

高橋―チルドレンズ・ミュージアムは再開発地区に建てられたものが多いですが、これにはなにか戦略的な理由があるのでしょうか。

許斐―そうした場所を利用すれば、館の設立費用が安くなるということもあるのだと思います。それと併せて、再開発地区のコアとして地域から歓迎されるという面もあるかもしれません。

高橋―集客装置としても期待されていると。

許斐―多くの来館者が訪れるというのも重要なポイントですが、関係者の話では必ずしも集客を第一に考えているわけではなく、自分たちのヴィジョンを実現するということに重きがあるように思いました。例えば、シカゴのチルドレンズ・ミュージアムはネイビー・ピアという再開発地区のショッピング・センターにあるんですが、今後はそこから出ることも含めて検討しているそうです。人が集まる場所がベストというより、自分たちの使命にとって適切な場所かどうかを重視するのだと思います。

倉本―チルドレンズ・ミュージアムの立地について調べてみると、やはり人の多い大都市周辺につくられたものが一番多い(図3参照)。いわゆる都市型、都市に住んでいる人を対象としたチルドレンズ・ミュージアムです。次には都市の周辺、いわゆる郊外型のものが多い。それから、もう少し離れたいわゆる田園型というようなタイプがある。都市型が全体の67%で、郊外型が22%、田園型が11%くらいです。
 展示スペースの広さについては(図4参照)、5000平方メートル以上のものは7館で、全体の5%くらいです。それから3000〜5000平方メートルくらいのものが、11館、8%くらい。200〜3000平方メートルが106館、だいたい80%になります。200平方メートル以下の小さいものは20館程度で、7%くらいです。3000平方メートル以下の館が一番多いんです。
 ミュージアム・ショップの運営については、89%が館の直営で、外部に委託している館が11%です。ショップの広さは、200平方メートル以下の館が約90%で、それほど大きくはないという状況が見られます。
図3 4
図3:米国チルドレンズ・ミュージアム(立地型別) 図4:チルドレンズ・ミュージアムの展示スペース




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