【Cultivate Vol27 特集◎アメリカのチルドレンズ・ミュージアム事情】より

米国チルドレンズ・ミュージアムのマネージメント・システムに学ぶもの

AAM(全米博物館協会)シニアマネージャー エリック・レドベター(Erik Ledbetter)
ACM(全米子ども博物館協会) ジャネット・ライス・エルマン(Janet Race Elman)
インタビュー/高橋信裕



多様性を尊重し市場原理を捉える

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玩具コレクション(インディアナポリスCM)
(※チルドレンズ・ミュージアムはCMと略記)
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玩具コレクションのひとつ「スターウォーズ」
(インディアナポリスCM)
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玩具コレクションの収蔵庫(インディアナポリスCM)
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玩具コレクションのひとつ「ミッキーマウス」
(インディアナポリスCM)
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プリーズ・タッチ・ミュージアム
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プリーズ・タッチ・ミュージアムのリニューアル計画図

高橋―ここでは、全米的な視座からチルドレンズ・ミュージアムを俯瞰できればと思います。そこでAAMとチルドレンズ・ミュージアムの全米的な横断組織であるACMの担当者のお二方からお話を伺います。まず、レドベターさんからお願いします。

エリック・レドベター
Erik LEDBETTER

レドベター―アメリカには全米の博物館を統括する日本の文部科学省に相当する中央省庁がなく、文化教育行政は連邦政府から独立した地方政府(州政府)が独自に行う制度を採っています。また連邦政府が所有する博物館も少ないですから、博物館の発展、促進は、AAMが一元的に統括し、各館に助言、指導、支援する役割を担っています。
 一方、ACMはAAMの傘下にあり、子どもや保護者を対象としたチルドレンズ・ミュージアムの領域をカバーしています。アメリカは国が大きく、博物館の数も多いことから、組織も階層的になっています。AAMには、様々なジャンルと規模の博物館が加入しており、その下に専門分野ごとの組織(協会)があります。すなわち、ACMや科学技術博物館協会、美術博物館協会などですが、AAMはこうした組織の全てを網羅した機関で、政府に対する対応窓口として機能することで、ロビー活動を中心に、博物館活動の維持発展を守るための働きかけを行っています。

高橋―連邦政府へ働きかけて、実現した事例をお話しいただけますか。

レドベター―最近では、海外との交流プロジェクトが挙げられます。現在、国務省では博物館職員の交流を目的に、海外の博物館と連携し合うプロジェクトを立ち上げています。これらの博物館は、ジャンルを限らず、どの分野でも構いません。アセスメント(評価)については、日本に学ぶことが多いので日米共同で取り組むことも考えられます。

高橋―現在、AAMが最も関心を寄せている課題やテーマはなんでしょうか。
レドベター―アメリカの博物館は、法律、税法上、私企業とされています。非営利団体ですが、公益団体ではないといった位置付けにあり、法律上の優遇制度もあります。もともと社会教育的スタンスから教育機関としての意識があるのですが、一方ではビジネスといった経済的な価値を創り出す機関としての意識もあります。非営利団体ですから、利益を上げることが第一の目的ではありませんが、当然、経費分の収入を確保する自助努力が求められます。そこでAAMでは、金融、財務、運営資金についての研究を進めています。同時に、博物館の命綱である資金源とその獲得、調達方法についての調査も行っています。

高橋―博物館を評価するスタンダード、指標的な基準はあるのですか。

レドベター―AAMでは限られた研究資金のもとで、施設規模に関係なく、博物館を幅広く捉えて標準化に取り組んでいます。ただ、独自のプログラム開発は行っていません。アメリカの伝統でもあり特性のひとつですが、「学び」についてのスタンダードが国として確立されてこなかった。つまり、多様性を重んじてきたために、「学び」について標準化された一律の制度が歴史的にないのです。その裁量は、各州の地方政府に委ねられ、各州がそれぞれ決めて行ってきました。
 こうした国情のため、博物館の標準化づくりに関しても、全米レベルでの標準化には難しいものがあります。ですから各州の博物館が、それぞれの州のスタンダードに合わせていくことになると思います。しかし、博物館は学校ではないので、標準化は難しいのです。

高橋―アメリカの博物館は、法律、税法上も私企業と位置付けられているとのことですが、活動の運営資金はどのように調達され、保障されているのでしょうか。

レドベター―一般的に運営資金については、1/3は政府からの補助金です。それも中央政府からより、地方政府からの資金が多いのです。1/3は博物館自身の事業収入、すなわち入館料、カフェ・レストラン、ミュージアムショップの収入です。後の1/3は、財団や個人からの寄付、メンバーシップ(会員)からの会費収入です。資金源の獲得が博物館の課題であり、大きな仕事になっています。運営資金で大きな比重を占めるのが「財団」からの助成金です。アメリカで博物館に資金を提供する財団には、NSF(National Science Foundation)とIMLS(Institute Of Museum & Library Service)があります。IMLSはアメリカ連邦の議会が設置した機関で、連邦政府から独立した機関です。資金を受ける条件として、過去五年間の成果報告書の提出が義務付けられています。

高橋―最近の博物館のトレンドについては、どういう点に特色が見られますか。

レドベター―アメリカの博物館には今、ダイナミックな新しい波が起こっています。従来型の常設展示とは異なる展示が主流を占めつつあります。例えば、触ることのできる展示や壊れてもかまわない展示物の採用、地域に伝承されてきた身近な道具への関心など、鑑賞中心だった展示から来館者の五感に訴えかける展示へと様変わりしてきています。
 また、「フレンドリー」という言葉もキーワードです。おじいちゃん、おばあちゃんが孫の手を引いて博物館にやってきますが、そこで家族間のコミュニケーションが図られ、交流の絆が一層強められます。アメリカでは、両親が共稼ぎの家庭が多いため、子どもと祖父母が博物館で一日を楽しく学んで帰るスタイルが増え、そうした人々が新しいターゲットになっています。また、高齢者や障害者に対する対応、乳幼児を同伴する家族へ配慮した乳母車等への対応から、建築の面で段差をなくすなど「ユニバーサル」な取り組みが一般化してきています。チルドレンズ・ミュージアムでも「入りやすい博物館」ということで賞を受けた館もあります。
 そして重要なのは、アメリカの博物館は「市場原理」によって動くという点です。アメリカには、ローカルで考え、対応していくという考えが根強くあります。多様性の大切さを重んじる考えがあり、その多様性を動かすのは市場原理です。博物館を研究・調査し、評価することも大切ですが、それよりも来館者をエキサイトさせ、楽しませる。これで上手くいく、といった六感的なセンスが求められるのです。




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